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座談会(Round Table Discussion)

ホジキンリンパ腫診療の現在

渡辺隆岡本昌隆小椋美知則木下朝博永井宏和

Trends in Hematological Malignancies Vol.3 No.1, 8-13, 2011

ABVD療法とその有害事象対策
渡辺 今回は「ホジキンリンパ腫診療の現在」というテーマで,現状における最適な治療および今後の課題についてご討議いただきます。

出席者(50音順、写真左から)
国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科病棟医長
渡辺 隆(司会)

藤田保健衛生大学医学部内科学血液・化学療法科教授
岡本昌隆

名古屋第二赤十字病院血液・腫瘍内科部長
小椋美知則

名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科准教授
木下朝博

名古屋医療センター血液・腫瘍研究部長
永井宏和

ABVD療法とその有害事象対策(続き)

渡辺 ホジキンリンパ腫は病期を的確に診断し適切な治療を行うことにより長期生存が期待でき,現在のところ進行期におけるフルコースのABVD療法および早期における短期ABVD療法施行後の局所放射線照射が標準療法となっています。
 ABVD療法とは,ドキソルビシン,ブレオマイシン,ビンブラスチン,ダカルバジンを用いる併用化学療法で,その有用性が認められてはいるものの,悪心・嘔吐,血管炎などさまざまな有害事象も起こってきます。特に悪心に対しては,従来から使用されているデキサメタゾン,グラニセトロンに続いてアプレピタントなど新しい制吐剤が開発されていますが,施設によっては使用するレジメンの嘔吐レベルに合わせたプロトコールが指定されていることも少なくありません。そこでまず,先生方の施設における制吐対策についてお聞かせください。
木下 癌化学療法で出現する悪心・嘔吐について,当施設ではシスプラチンを使用するレジメンにアプレピタントを記載するようになっています。ABVD療法については特にプロトコールとして決められた制吐剤はありませんが,強い嘔吐の場合に2回目施行時からアプレピタントを使用して奏効する患者さんがいます。高度催吐性化学療法剤であるダカルバジンが含まれるレジメンなどでは,早期からの新規制吐剤の投与が必要ではないでしょうか。
小椋 当施設では,グラニセトロンなどの5-HT3アンタゴニスト使用時やブレオマイシンの発熱予防にデキサメタゾンを併用して使用しており,ステロイド薬を比較的ルーチンに使っています。
永井 われわれもデキサメタゾンを制吐剤として標準的に使っています。グラニセトロンにデキサメタゾンを混注するかたちでも使います。またブレオマイシン使用時はヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウムを本体に入れるかたちで使用しています。
岡本 われわれの施設では,ブレオマイシン投与の30分ほど前にヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウムを静注で使いますが,制吐目的ではデキサメタゾンはほとんど使っていませんね。
渡辺 ホジキンリンパ腫の患者さんは,基本的にリンパ球機能は落ちてはいないように思いますが,その点についてはどのようにお考えでしょうか。
小椋 ある程度は抑制されていますが,特に予防しなくてもニューモシスチス肺炎が起こるほどのことはないと思います。
岡本 ABVD療法によりBリンパ球が5%以下にまで減少し,治療終了後もしばらく回復してこない場合がときどきあります。今までそれで重症感染症を引き起こした経験はありませんが,この点も踏まえて当初からデキサメタゾンを処方することは控えています。
渡辺 ABVD療法では血管炎にもしばしば難渋します。ダカルバジンの投与速度を速めたり遮光したりすることで軽快する場合もありますが,先生方はどのように対処されていますか。
永井 血管炎でどうしても耐えられない患者さんや注入する血管もなくなってしまった患者さんに対しては,CVポートの適応もやむをえないと思います。ダカルバジン投与の際,少し局部を温めてあげると痛みが紛れることもありますが,エビデンスはありません。CVポートは症例を限って適応を考えていますが,CVポートなしで治療できる方がほとんどです。
小椋 私の施設でも遮光はしているのですが,遮光しない場合と比較してどの程度の有意差があるのかについては明らかなデータがありません。
木下 従来は光変性物質に催吐性があって血管炎の原因になっているとされていましたが,これもエビデンスはありません。CVポートに関しては,最近手技に慣れてきた傾向がみられますし,器具自体も逆流阻止弁が付いて2~4週間放置したままでも詰まらないようにするなど改善が進んでいるようです(図1)。

ABVD療法の用量強度と肺障害

渡辺 続いて,ABVD療法の用量強度について話題を移します。わが国では日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group ; JCOG)のリンパ腫グループが主催した臨床試験(JCOG 9305)に基づいてダカルバジンの投与量を減量した変法(ABVd療法)1)がしばしば行われていますが,欧米ではフルドーズが強く推奨されています。また,ABVDの投与間隔を短いままにして,投与量は維持することも行われています。
岡本 われわれの施設ではダカルバジンはフルドーズで行っていますが,白血球数が減少してもG-CSF(granulocyte-colony stimulating factor)などを使わずに完遂できています。実際にday1やday15に白血球数が低下している場合,従来は3,000/mm3の規準を決めて投与間隔を延ばすなどの対応をしていましたが,最近は2,500/mm3以上あるものについてはそのまま減量せずに6コース12回施行しています。2,500/mm3以下については投与間隔を延ばすなどの対応を一応は考慮しますが,その後の治療経過をみて特に問題がないようであれば2,500/mm3以下でも通常の投与間隔に戻しています。
木下 私も,白血球数が低下している60歳ぐらいの患者さんに十分なインフォームド・コンセントのもとで行ったことがありますが,特に問題なく6コースを完遂できました。当施設では好中球数を指標としているのですが,Grade 3の場合であれば全く問題なくフルドーズで6コースを完遂した患者さんもいますし,Grade 4でも完遂したという報告を受けています。投与間隔の2週間というのはちょうど骨髄が立ち上がってくるところで,好中球は少なくても網状赤血球がしっかり回復していることが確認されればよいのではないでしょうか。ただ,もう少し経験を積まなければ的確な評価はできないと思っています。
小椋 もともとABVD療法は1970年代に開発され,コンプライアンスのよさもあって定着したものです。現在はG-CSFも開発されていますので,ABVD(d)療法施行については安易に2週間という間隔を延ばしたり投与量を減量したりしないほうがよいと私も思います。
永井 私も基本的には間隔を延ばさない方針ですが,そのためにはどうしてもG-CSFを使用せざるをえない患者さんもいます。ただ,G-CSF併用の場合はブレオマイシンによる肺障害の出現が非常に気になるところです。
小椋 肺障害の1つは薬剤性間質性肺炎の発症ですが,その場合は検査所見として低酸素血症がみられますから,私の施設ではABVd療法の直前に血液ガスを測定するようにしています。JCOGの臨床研究でも投与前の血液ガスチェックで薬剤性間質性肺炎に留意することが指摘されており,実際に発症すると致命的になることもあり,血液ガスは必ず測定しています。こうした方法をとることで,これまでのところ肺障害の発症にまで至った経験はありません。
木下 当施設では,血液ガスのかわりに酸素飽和度(SpO2)を測定しています。米国NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインでは治療途中で肺機能検査を行うことを推奨しています。
岡本 当施設では,ABVD療法2コースで4回投与を行った後ごとに肺機能検査を行っています。一応,%DLCO 60%あるいは前値よりも15%以上の低下を中止の規準にしています。肺機能検査を行って施行中止に至った患者さんはこの数年で1例あるかないかですが,高齢者については少し規準を厳しくしますので中止することもまれにあります。
永井 文献的には,メイヨークリニックの後方視的解析としてブレオマイシン関連肺毒性の出現率が18%であったと報告されています。ブレオマイシンが投与された後で縦隔照射を行うことにより,放射線障害とブレオマイシンの相乗効果が起きているのではないかとも考えられますが,いずれにしても実際の臨床上での頻度は少ないですね。

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