はじめに  タイトルは「乳癌における薬物療法(主にアバスチン)と血圧管理」だが,筆者の専門は消化器癌である。したがって今回の内容は,乳癌ではなく大腸癌でのデータが中心になることをご容赦願いたい。  わが国での乳癌に対するアバスチン(一般名ベバシズマブ)は2011年9月に保険承認されてまだ1年ほどであるが,大腸癌では2007年4月に承認されており5年近くの実臨床での使用経験がある。実臨床でアバスチンを投与する際に臨床医が特に気を使う副作用は腸管穿孔,出血,血栓症である。これらの副作用は死亡例も報告されている。一方,アバスチンによる高血圧はその頻度は高いものの降圧薬の投与によりコントロールは比較的容易で減量も特に必要ないことから,それほど注意を払っていない臨床医も多いのではないだろうか。このアバスチンによる高血圧だが,近年,治療効果との相関を調べた研究が増えてきている 1) 2)。本稿ではアバスチンによる高血圧とその管理,さらにアバスチンによる血圧変化と治療効果との関係について紹介する。