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mTOR

上野貴之

CANCER BOARD 乳癌 Vol.5 No.2, 59-61, 2012

はじめに
 Rapamycinは放線菌(streptomyces hygroscopics)が産生するマクロライド系抗生物質(抗真菌薬)として1970年代に発見され,抗真菌作用のほか,抗癌作用や免疫抑制作用など,幅広い増殖抑制作用が知られていた。mTORは,1994年にrapamycinの哺乳類におけるターゲットとして発見され 1) 2),mammalian target of rapamycinの略であったが,現在では公式名称としてmachanistic target of rapamycinが採用されている(HUGO Gene Nomenclature Committee)。mTOR阻害薬は,現在腎細胞癌などで治療薬として使用されており,乳癌においてもホルモン療法(アロマターゼ阻害薬)との併用においてその有用性が示され 3),新規の分子標的治療薬として期待されている。

mTORの作用(図1)

 mTORは細胞質に存在する蛋白質(セリン/スレオニンキナーゼ)であり,すべての真核生物(eukaryotes)において保存されている。遺伝子のノックアウトは致死的であることより,生命(発生)にとって必須の遺伝子と考えられる 4) 5)。2つの蛋白質複合体[mTORC(mTOR complex)1,mTORC2]の形成を通してその作用を発現する。増殖因子受容体からのシグナルやアミノ酸,エネルギー状態,酸素状態などに反応して作用する。癌においては主に増殖因子受容体シグナルとの関連が注目されているが,それ以外の代謝や生体環境との関連も重要である。その作用としては,生存や増殖のほか,細胞骨格の調整,オートファジー抑制やエネルギー代謝への関与など多岐にわたる(図1)。免疫系においてはT細胞の増殖や運命決定,B細胞の分化に重要な働きをしていることが知られている。

癌とmTOR(表1)

 癌において,PI3K/mTORシグナルの亢進はよく知られている。乳癌では増殖因子受容体シグナルの亢進(遺伝子増幅,蛋白過剰発現,活性型変異)のほか,その経路に関与する分子の変異や活性の変化がPI3K/mTORシグナルの亢進に関与する 6) 7)。PI3Kの触媒サブユニットであるPIK3CAの変異(活性型変異)やPTEN(PI3Kシグナルを負に調節)の不活性型変異や発現低下は癌で頻繁に認められるが,いずれもPI3K/mTORシグナルの亢進を引き起こす(図1,表1)。

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