エキスパートの治療法―症例から考える―
4型胃癌の治療方針
胃がんperspective Vol.11 No.2, 38-41, 2020
症例:51歳,女性
既往歴:虫垂炎(幼少期に手術),軽度の喘息
現病歴:検診の胃X線造影検査で異常を指摘され近医で上部消化管内視鏡施行,進行胃癌を指摘され精査・加療目的に当院紹介受診。PS 0。以前より胃もたれを感じているものの,食事は摂取できている。
所見:上部消化管内視鏡検査では,全体的に伸展不良でスキルス胃癌を疑う所見である。生検でpor, sig, HER2 score 0(図1)。X線造影検査では,体部から前庭部にかけて明瞭な進展不良を伴う狭小化像が認められ,典型的なスキルス胃癌の所見(図2)。CTでは,胃体部~前庭部の壁肥厚に加え,小弯リンパ節の腫大が認められ転移を疑う(図3)。以上の所見から,進行胃癌UMLCirc Type4 por+sig 180mm cT4a(SE)N1M0 cStage ⅢAと診断した。
経過:本症例に対しては,術前化学療法を行わずD2郭清を伴う胃全摘,脾摘,ルーワイ再建を行った。現在,補助化学療法の位置づけでS-1/ドセタキセル併用療法を行っているが,術後半年の時点で明らかな再発は認めていない。
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