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私と胃癌

第8回 網嚢切除の有用性についての研究

山村義孝

胃がんperspective Vol.10 No.3, 62-66, 2019

私が医師になった昭和44年(1969年)当時,外科医にとって最もポピュラーな悪性腫瘍は胃癌であり,自ずとその診断・治療にかかわることになった。
診断用機器のうち,バリウムによる消化管透視装置として,今日のような遠隔操作によるX線テレビジョンが普及していたが,暗室内で患者さんとの間に蛍光板を置いて対面式に透視を行う旧式の装置も使われていた。内視鏡検査でも,すでにファイバースコープが導入されていたが,旧式のVa型胃カメラも使われていた。これらの検査機器の過渡期を経験した最後の世代である。
一方,胃癌治療のメインは外科的切除であり,化学療法が有効でなかった当時においては,現在よりも手術の比重はいっそう大きなものがあった。その基本はできるだけ癌細胞を取り除くことにあり,根治が望める症例ではできるだけen blocに,根治が望めない症例でも切除できるものは切除(減量手術)することが求められた。
網嚢切除は,腹膜転移を予防・治療するために,網嚢内に播種または播種しているかもしれない癌細胞をen blocに取り除く目的で行われる。先輩の厳しい指導のもと全例に網嚢切除を行ったが,漿膜浸潤が前壁の症例や早期癌でも必要なのだろうかとの疑問ももっていた。しかし先輩に訊いても満足のいく回答が得られず,自分で解決しようとしたのは1982年に愛知県がんセンターに赴任して以降のことである。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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