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State of the art(胃がんperspective)

マウスモデルを用いた胃癌幹細胞へのアプローチ

清島亮永野修佐谷秀行

胃がんperspective Vol.10 No.3, 24-29, 2019

胃癌の多くは,ヘリコバクター・ピロリなどの感染による慢性炎症を背景として発症することが知られている。近年,さまざまな癌腫において癌発生の大元になる癌幹細胞と呼ばれる細胞が同定されてきている。胃癌においても,CD44 variant(CD44v)と呼ばれる分子を細胞表面に発現する腫瘍細胞が,胃癌幹細胞としての性質を有していることが明らかとなってきた。しかしながら,これらの胃癌幹細胞がどのように胃粘膜から発生してくるのかについては,これまでよく知られていなかった。近年,慢性炎症を背景に胃に腫瘍形成を引き起こすマウスモデルK19-Wnt1-C2mEマウスが開発され,正常な胃粘膜がどのように前癌病変へと変化し,腫瘍形成を引き起こすかを連続的に観察することができるようになった。そこで筆者らは,このマウスモデルを用いて慢性炎症から胃癌幹細胞が発生するメカニズムについて研究を行い,胃粘膜での活性酸素種(ROS)の蓄積が引き金となってCD44v陽性胃癌幹細胞が生じてくることを明らかにした。本レビューでは,これまでに筆者らがマウスモデルを用いて行った胃癌幹細胞の発生メカニズムに関する研究を基に,最新の知見を交えて解説する。
「KEY WORDS」癌幹細胞,CD44バリアント,活性酸素種,慢性炎症,前癌病変

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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