State of the art(胃がんperspective)
新しいタイプの胃癌~胃底腺型胃癌の臨床病理
胃がんperspective Vol.8 No.3, 16-22, 2016
胃底腺型胃癌 Gastric adenocarcinoma of the fundic gland type (chief cell predominant type)はH.pylori未感染胃癌のひとつと考えられ,今後さらに注目されるべき特殊な分化型胃癌である。内視鏡的特徴として,通常観察では①粘膜下腫瘍様の形態,②褪色調,③拡張した樹枝状の血管,④背景粘膜の萎縮性変化なしの4つがあり,NBI併用拡大観察では①明瞭なDL(Demarcation line)なし,②腺開口部の開大,③窩間部の開大,④Irregularityに乏しい微小血管の4つがあり,典型的な症例は内視鏡的に診断は可能であるが,非典型的な所見(発赤調,平坦・陥凹型)を示す症例も散見され,注意を要する。確定診断には免疫染色を含む病理組織学的診断が必要である。診断的治療目的に内視鏡治療が選択される症例が多いが,追加外科切除の有無にかかわらず再発は認めておらず,通常型胃癌と比較して予後がよい可能性が考えられる。今後は胃底腺型胃癌の自然史や発癌機序の解明が課題であり,近い将来相対的に増加することが予想される胃底腺型胃癌を含むH.pylori未感染胃癌の解明と臨床的な取り扱いを確立する必要がある。
「Key words」胃底腺型胃癌,H.pylori未感染胃癌,分化型胃癌,pepsinogen-Ⅰ
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