エキスパートの治療法―症例から考える―
早期胃癌の治療方針
胃がんperspective Vol.8 No.2, 38-40, 2015
【症例提示 中村理恵子(慶應義塾大学医学部腫瘍センター)】
「症例」
年齢 性別:35歳,男性
既往歴:特記すべきことなし
現病歴:胃痛を主訴に近医にて上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃角部に発赤面を認め,生検を行った。結果,group5とのことにて精査加療目的にて紹介受診となった。
所見:上部消化管内視鏡精査にて,胃角部小彎に発赤と周囲に褪色調の広がりをもった粘膜病変を認めた。また,CT検査にてリンパ節転移を含めた遠隔転移は認められなかった。
経過:NBI拡大観察にて褪色域に異常血管を認め,病変境界は酢酸散布後のインジゴカルミン散布にて明瞭となり,約20mm大の粘膜内癌と診断した。以上より内視鏡治療適応,もしくは拡大適応病変を考え,ESDを施行した。
当院での治療経過:ESD後の病理所見で内視鏡治療適応外病変と診断し,LADG(D2-12a),RY再建を施行した。切除検体の病理結果は,residual cancer tissue,tub2>por,pT1a(m),ly0,v0,pPM0,pVM0,LN(-)でした。また,残存病変はESD切除後の瘢痕部に認められ,粘膜内に存在し,残存病変の長径は約16mmでした。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。