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レジデントからのQ&A

術前・術後の補助化学療法について教えてください

掛地吉弘脇啓一郎前原喜彦

胃がんperspective Vol.4 No.3, 40-41, 2011

Answer
補助化学療法の目的と標準治療
 切除不能進行・再発胃癌に対する化学療法は癌の進行を抑えて生存期間を延ばす「care」が目的ですが,手術の前後で行う補助化学療法の目的は癌の根治を目指す「cure」です。2010年に改訂された胃癌治療ガイドライン第3版1)では,術後補助化学療法を初めて推奨し,T3(SS)N0を除くpStageⅡ,pStageⅢの症例に対してS-1の1年間投与が標準治療となっています。術前補助化学療法は臨床研究としての治療法とされています。術前補助化学療法を行う場合は,あらかじめ患者にその理由を説明し,十分な理解を得たのち同意を得ることが望ましいと書かれています。

術後補助化学療法(adjuvant chemotherapy)

 術後補助化学療法は,治癒切除後の微小遺残腫瘍による再発予防を目的として行われます。
 2007年に進行胃癌に対する術後補助化学療法としてのS-1の有効性が臨床試験(ACTS-GC試験)の結果として報告されました2)。ACTS-GC試験での対象症例は,胃癌取扱い規約第13版による根治A,B手術(D2以上のリンパ節郭清)を受けたpStageⅡ症例,pStageⅢA症例,pStageⅢB症例(ただしT1症例を除く)でした。胃癌取扱い規約第14版では,TおよびNの分類法とStageが大幅に変更になっており,胃癌取扱い規約第13版からの単純な読み換えはできませんが,SS N0症例(旧規約でStageⅠB,新規約でStageⅡA)とT1症例を除けば,新旧の「StageⅡ集団/StageⅢ集団」はほぼ同一となることが判明しています。したがって,新しいガイドラインでもT3(SS)N0を除くStageⅡ/StageⅢを補助化学療法の対象としています。
 投与の実際は,手術からの回復を待って,術後6週間以内にS-1投与を開始します。標準量80mg/m2/dayの4週間投与2週間休薬を1コースとし,術後1年間継続します。非手術例に比べ術後投与では血液毒性,非血液毒性とも出現しやすいので,臨床所見,血液所見に応じて薬剤投与レベルを下げる(減量)か,投与スケジュールを2週間投与1週間休薬に変更するなどの対応を適宜行うようにします。
 ACTS-GC試験でのStageⅡ,StageⅢA,StageⅢBの5年生存率は手術単独群で各々71.3%,57.3%,44.1%で,S-1投与群で各々84.2%,67.1%,50.2%でした。StageⅡに比べて,StageⅢA,StageⅢBでは再発率が高く,再発をより抑えるためにS-1単独投与よりも強力な化学療法が臨床試験として検討されています。同時併用のS-1+α療法として,S-1+シスプラチン(CDDP)療法3)やS-1+ドセタキセル療法4)の第Ⅱ相試験が行われています。逐次併用療法の漿膜浸潤陽性胃癌症例を対象とした第Ⅲ相試験としてフッ化ピリミジン単独療法とパクリタキセル→フッ化ピリミジン逐次併用療法の比較およびテガフール・ウラシル(UFT)とS-1の比較:SAMIT試験5)も結果が待たれます。
 術後補助化学療法は胃切除後であるため,決められた投与量を投与することが難しく,コンプライアンスの問題があります。術後よりも術前の方がコンプライアンスがよいので術前化学療法の効果が期待されます。

術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy)

 胃癌治療ガイドライン第3版1)において,術前化学療法は「再発の一要因となる微小転移の消滅を図り,その後遺残した原発巣や転移巣を切除する集学的治療」と定義されています。現在,臨床研究として検討されている段階です。術前化学療法の対象となる症例は,①手術単独でも治癒切除を達成できるが,再発の危険の比較的高い症例(cStageⅢA~cStageⅢC(cT4,cN1-2,P0,H0):微小転移のコントロール目的),②R0/R1切除が可能でも予後が不良な症例(高度リンパ節転移を有する,または大型3型,4型胃癌などの高度進行癌:ダウンステージ目的)と説明されています。
 現在,わが国では「根治切除可能な大型3型・4型胃癌に対する術前S-1+CDDP併用療法による第Ⅲ相試験(JCOG0501試験)」6)が2006年から実施されています。術前化学療法はS-1+CDDP療法を4週1コースとして合計2コース行います。この有効性が証明されれば,進行胃癌に対して術前化学療法が集学的治療戦略の一つになると考えられます。S-1+αのレジメンについては,S-1+イリノテカン療法7)などさまざまな臨床第Ⅱ相試験が行われています。奏効率は59%(16/27),Grade 1b以上の組織学的効果は43%(13/30)と報告されています。

●References
1)日本胃癌学会(編):胃癌治療ガイドライン医師用2010年10月改訂. 第3版, 金原出版, 東京, 2010
2)Sakuramoto S, Sasako M, Yamaguchi T, et al:Adjuvant chemotherapy for gastric cancer with S-1, an oral fluoropyrimidine. N Engl J Med 357:1810-1820, 2007
3)Takahari D, Hamaguchi T, Yoshimura K, et al:Feasibility study of adjuvant chemotherapy with S-1 plus cisplatin for gastric cancer. Cancer Chemother Pharmacol 67:1423-1428, 2011
4)Emi Y, Orita H, Yamamoto M, et al:Feasibility of adjuvant S-1 plus docetaxel against stageⅡ-Ⅲ gastric cancer following R0 resection in gastrectomy. The 34th Congress of the European Society for Medical Oncology abstract #6536, 2010
5)UMIN CTR 臨床試験登録情報の閲覧 C000000082 漿膜浸潤陽性胃癌症例を対象とした術後補助化学療法のFactrorial Designによるランダム化比較試験;フッ化ピリミジン単独療法とpaclitaxel→フッ化ピリミジン逐次併用療法の比較およびTegafur, Uracil(UFT)とTS-1の比較:the Stomach Cancer Adjuvant Multi-institutional Trial Group(SAMIT)試験. (https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr.cgi?function=brows&action=brows&type=summary&recptno=R000000076&language=J)
6)種村廣巳, 大下裕夫, 山田 誠, ほか:進行胃癌に対するS-1+CDDPによる術前化学療法の術後病理組織効果と予後. 癌と化学療法 37:447-451, 2010
7)Terashima M, Saze Z, Hosotani M, et al:Results of a phaseⅡmulticenter study of neoadjuvant S-1 and irinotecan in patients with locally advanced gastric cancer. ASCO annual meeting abstract #4122, 2010



九州大学大学院消化器・総合外科 准教授
掛地吉弘 Yoshihiro KAKEJI

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