「Summary」 Crohn病に合併する悪性腫瘍のうちで大腸癌は一般人口に比べて多い. 大腸癌は欧米では結腸癌が多いが, 本邦では痔瘻癌を含む直腸肛門管癌が多く合併することが特徴であり, 長期経過例の増加に伴って徐々に増加し, 進行癌で発見されることが多い. 現状では狭窄症状の進行, 下血などの臨床症状の変化に留意し, 癌合併を念頭に置いて積極的な細胞診, 組織診を行うことが早期発見に必要と考えられる. 癌サーベイランス法の確立について, 現在, 厚生労働省難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班で本症に合併した直腸, 肛門管癌に対する本邦独自のsurveillance programを検討するため多施設でのpilot studyを行っている. 「はじめに」 Crohn病に合併した大腸癌はWarrenらによって上行結腸癌合併例が初めて報告され1), 近年は本症に合併する消化管悪性腫瘍のうち, 小腸癌, 大腸癌の相対危険度は高いと述べられている2).