炎症を背景とした発癌は, これまで肺, 膀胱, 消化管, 肝臓などさまざまな臓器で注目されてきた. いずれの臓器においても, 慢性的な炎症の刺激により癌が発生すると考えられている. 大腸領域で炎症による発癌としてまず頭に浮かぶのは, 炎症性腸疾患における発癌, 特に潰瘍性大腸炎に発生する大腸癌であろう. 潰瘍性大腸炎では発症後罹病期間が長くなると, 合併症として大腸癌が問題となり, その早期発見, 早期治療が重要である. しかし, 潰瘍性大腸炎合併大腸癌は一般大腸癌と臨床病理学的に異なる点もあり, その扱いは注意を要する. また, クローン病には大腸癌のみではなく, 小腸癌やクローン病の痔瘻に合併する痔瘻癌なども問題となる. 一方, 炎症性腸疾患に合併する癌については, 臨床的にも基礎的にもまだまだ解明されていない点が多い. しかし, 実際の臨床現場ではそうした疾患に対峙しなくてはならない. 本特集では, 代表的な炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎およびクローン病に合併する癌の, 診断, 治療について, 専門の先生方に解説していただいた. 炎症性腸疾患以外の大腸疾患で, 炎症と発癌が問題となるものとしては, 痔瘻癌や放射線照射後の長期合併症としての大腸癌などがある. 痔瘻癌にはクローン病の痔瘻に合併する痔瘻癌があるが, クローン病を合併していない痔瘻でも長期経過例では癌の合併が問題となる. また, 婦人科悪性疾患など骨盤への放射線照射後も放射線腸炎, そしてその炎症による発癌も問題となる. 本特集では, 大腸領域における, こうした炎症性腸疾患以外の炎症を背景とした癌についても, その診断, 治療について専門家の先生方に解説していただいた. 炎症性腸疾患に加え, 痔瘻癌や放射線照射後の二次発癌などを包括的に扱った特集は, これまでにあまりなかったように思う. さらに本特集のコラムでは, 最近の知見も含めて, 炎症と癌の関係を基礎的に解説していただいている. 本特集が実臨床の場で, そして今後の炎症と発癌の機序の解明に向けても役に立つことを期待している.
特集 炎症と大腸癌
特集にあたって
掲載誌
大腸癌FRONTIER
Vol.6 No.2 13-13,
2014
著者名
渡邉 聡明
記事体裁
抄録
疾患領域
消化器
/
アレルギー・免疫
/
癌
診療科目
消化器外科
/
放射線科
/
一般外科
/
腫瘍内科
/
消化器内科
媒体
大腸癌FRONTIER
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。