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大腸癌の分子生物学

消化器癌におけるCD44の機能的役割

吉田剛佐谷秀行

大腸癌FRONTIER Vol.6 No.1, 53-58, 2013

「Summary」腫瘍の治療抵抗性の根幹には癌幹細胞の存在がある. CD44は癌幹細胞を分離する細胞表面マーカーとして知られているが, 胃癌・大腸癌などの消化器癌では, 癌幹細胞分画においてそのスプライスバリアントであるCD44v8-10が多く発現している. 最近, われわれの研究室では, CD44v8-10がシスチンの輸送体であるxCTと相互作用することでその細胞膜における安定性を高め, 還元型グルタチオンの合成を増加させることで, 酸化ストレスに対する抵抗性を発揮することを明らかにした. さらには, 関節リウマチ・潰瘍性大腸炎の薬剤として知られているスルファサラジンがxCTを特異的に阻害することに基づき, CD44v8-10を発現している癌幹細胞を標的とした新規治療の臨床応用が進められている. 「消化器癌における癌幹細胞の生物学」腫瘍細胞はモノクローナルに増殖した細胞集団から構成されると考えられがちだが, 実際には, ヘテロ不均一な腫瘍細胞により構成され, それらが相互作用し, 周辺の微小環境を変化させ, 腫瘍組織という細胞社会を構築していることが指摘されている.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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