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大腸癌の分子生物学

腫瘍血管を構築するがん細胞

高倉伸幸

大腸癌FRONTIER Vol.5 No.1, 63-67, 2012

「Summary」腫瘍血管新生抑制剤の臨床的な応用が開始されているが, 実際のところその効果は当初の期待に比べれば十分なものとはいえない. 従来の血管新生抑制剤に関しては, 既存の血管から新しい血管が形成される血管新生の分子メカニズムにターゲットをあてて開発されてきている. しかし, 近年, 腫瘍においては正常組織では観察されないような, 腫瘍特異的な血管形成が営まれていることが判明してきた. たとえば, がん細胞自体が血管様の管を形成して体液循環にかかわること, そしてがん幹細胞が血管内皮細胞に分化して, 新しい血管形成に貢献することである. つまり, いわゆる血管新生の分子メカニズムの抑制だけでなく, このようながん細胞によるde novoな血管形成の分子メカニズムを抑制することが, 腫瘍血管の抑制に必要であることが示唆されてきた. 「はじめに」血管形成のプロセスは, 中胚葉細胞由来の血管内皮前駆細胞から分化した血管内皮細胞同士が接着して管腔を形成する, いわゆる脈管形成と(図1), 既存の血管から新たに血管分枝が発生して血管が形成される血管新生に大別される.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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