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大腸癌の分子生物学

癌治療におけるRNAi療法

西村潤一原口直紹竹政伊知朗水島恒和池田正孝石井秀始山本浩文関本貢嗣土岐祐一郎森正樹

大腸癌FRONTIER Vol.4 No.4, 73-77, 2011

Summary
 RNAiによる癌治療は1998年に発見された特定の遺伝子を抑制する機構である。siRNAやmiRNAによりmRNAを翻訳抑制・分解することによりタンパクの生成を阻害する。癌遺伝子がRNAiのターゲットとなる可能性があり,siRNAを用いた癌治療の開発が行われている。また,siRNAを治療標的細胞まで運搬するためには毒性の少ない,運搬効率のよい,免疫反応を誘導しないDDSの開発が必要である。現在,数は少ないがsiRNAを用いた癌に対する治療に関する臨床試験が行われている。

Key words
●RNAi ●drug delivery system ●癌治療

RNAi(RNA interference)の発見

 RNAiという現象はFire,Melloらにより線虫において解明され1, 2),哺乳類でもRNAiの誘導機構が存在することから注目を集めている。RNAiの技術は研究,臨床の分野で幅広く応用することができる可能性があり,Fire,Mello両者は2006年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことは記憶に新しい。遺伝子の発現を抑制する機構としては,DNAからmRNAへの転写が起きないようにする転写型遺伝子サイレンシングとDNAからmRNAが転写された後にmRNAが分解または翻訳を阻害されることによりタンパクの生成が阻害される転写後遺伝子サイレンシング(post-transcriptional gene silencing;PTGS)に大別される。転写型遺伝子サイレンシングはDNAのヒストン修飾,ヘテロクロマチン化などにより生じるものである。一方,PTGSはタンパクをコードしないノンコーディングRNAに属するsiRNAやmiRNAにより引き起こされる現象である3)。
 siRNAは20~25塩基長の小さな2本鎖RNAであり,siRNAを用いたRNAiは基礎研究においても遺伝子の発現を抑制する方法として応用されている(図1)。

外因性もしくは内因性の2重鎖RNA(double-stranded RNA)が細胞内にあると,RNAの構造であるリボ核酸を分解するDicerというタンパクにより20数塩基のsiRNAに切断される。siRNAはいくつかのタンパクとともにRISC(RNA-induced silencing complex)を形成し,RISCに含まれるArgonauteタンパクによりsiRNAの2重鎖がほどかれ,その1本鎖のRNA配列に相補的なmRNAに対合する。対合されたmRNAは切断され分解される。mRNAに相補的なsiRNAはRISCを形成したまま次の相補的なmRNAの分解に携わる。
 miRNAは脊椎動物遺伝子の1~4%を占めると見積もられている内因性の1重鎖RNAである4)。DNAから転写された1本鎖RNAが相補的に対合することでヘアピンループ構造を形成する(図2)。

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