Summary  大腸癌に対する手術療法は,1990年初頭より,低侵襲性治療法として腹腔鏡手術が登場して以来,痛まず・傷が小さく・早く家に帰れるという患者や社会のニーズに応じるべく年々普及してきた。わが国の医療保険制度では,2008年の保険改定によって腹腔鏡手術は開腹手術と比較し,保険点数による手術費や機材費による収入が上昇したものの,ディスポーザブルなどの機材納入費の支出から病院の利益が少ない傾向にあり,ディスポーザブルの納入価の抑制やリユーサブル機材の使用が望まれ,さらに人件費や減価償却費などの評価も必要と考えられている。一方,腹腔鏡手術は,術後在院日数の短縮や創関連合併症率の低下によって入院費の抑制をもたらすと考えられており,今後,手術療法における医療経済は,手術費や入院費だけでなく,退院後の早期社会復帰による経済効果なども含めて,患者,医療施設,国家のそれぞれの視点に立った評価が求められるといえよう。