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早期大腸癌の内視鏡治療・外科手術の最前線

【特別寄稿】拡大内視鏡観察によるpit pattern診断

山野泰穂

大腸癌FRONTIER Vol.4 No.3, 18-25, 2011

はじめに
 近年,大腸がんは増加傾向にあり近い将来には男女ともがん罹患率のトップの疾患となると予測されている状況で,大腸内視鏡の果たす役割は非常に重要になってきている。その中でも病変に対する早期発見さらには適確な診断は,その後の治療法の選択,あるいは遺残再発を防止する上でも重要な問題の一つとなっている。一方,内視鏡機器の進歩もあり拡大内視鏡が一般化しつつあり,「NBI(narrow band imaging)拡大診断」での保険収載の影響によりさらなる普及の加速が見込まれている。本稿では大腸におけるpit pattern診断に関して解説する。

拡大内視鏡の歴史と現状

 大腸における拡大内視鏡診断の礎は小坂ら1)による切除後の固定標本に対する実体顕微鏡観察にはじまり,病変により構造パターンが異なることが示された2,3)。これらの知見を基に生体内での拡大観察の試みが,1975年頃より固定倍率式拡大内視鏡でなされはじめ順次拡大倍率も上昇したが,挿入性,視認性に問題があり中断した経緯があった。
 しかし1993年にzoom式拡大内視鏡CF-200Z(オリンパス社製)の出現により,通常観察から拡大観察までが可能となったことで挿入性,視認性の問題が解消され,また病変の表面微細構造すなわちpit patternを生体内でも判断することが可能となった。その結果,工藤ら4-8)による精力的なpit patternと病理組織像との対比研究が行われ,生体内でpit patternを観察することで生検せずとも病理組織像を予測すること,すなわちpit pattern診断が確立された。
 さらに現在に至るまでCCDの高画素化,画像処理機能,Hi-vision化,NBI搭載,スコープの細径化,硬度可変などの内視鏡のハード面での開発がなされ,いまなお発展し続けている。これらの歴史を通じて拡大内視鏡自体が過去の「特殊な検査機器」ではなく「汎用機器」としての地位を確立しつつあり,またこれらを使用する医師側においても若い世代を中心としてpit patternに対する知識が急速に普及しつつある。拡大内視鏡所見は,内視鏡診断における一つの重要なfactorとなってきているのが現状である。

pit pattern診断

 pit patternとは大腸表面にある上皮腺管開口部(pit)の集まりを一つのパターンとして認識したものであるが,実際には腺管開口部ばかりではないこともある。したがって正しくは「表面微細構造」と表現するのがよいのであろうが,これらもすべて含めて「pit pattern」という言葉で総称していると考えて欲しい。
 pit patternは,生体内ではインジゴカルミン,クリスタルバイオレット(ピオクタニン)などの色素を用い拡大内視鏡で観察可能である。またNBIでもsurface patternとして腺管開口部を観察可能であるが,pit patternとは完全に一致しないこともあり留意すべき点である。
 さてpit patternでは,正常粘膜,過形成粘膜から腺腫,癌に至るまで病理組織が異なるのに比例して一定の類似性,法則性をもって特徴的に変化し,現在は工藤・鶴田分類として6型に分類されているものが,一般的かつ標準的に用いられている(図1)。

 Ⅰ型:円形ないし類円形の腺管開口形態で,組織型との対応は正常腺管である。炎症性変化や再生粘膜でも観察できるが,窩間部の拡張や被覆上皮の伸展などを伴う。また時に平坦型の腺腫腺管内にも認められることもあるが,腫瘍との鑑別にはpit周囲に被覆上皮をもつことである。

 Ⅱ型:pitの配列や大きさが比較的均一で規則性を示す星芒状様構造を示し,組織学的には過形成病変であることが多いが,星芒状と類似したシダ状あるいは樹枝状を呈する病変はserrated adenomaにも認められるが,病理学的に議論を残すところである。

 ⅢL型:管状・類円形を呈するpitの集合からなり,隆起型,表面隆起型病変の基本的pit patternである。組織学的には主に軽度~中等度異型腺腫である。また最近はⅢL型を示す病変であっても管状型のpitからのみ構成されるもの(ⅢL-1群)と,正常腺管であるⅠ型と管状のⅢL型が混在したもの(ⅢL-2群)に区別している。前者は主に隆起型で認められ,後者はⅡa+depやLST非顆粒型病変で認められることが多い。

 ⅢS型:正常よりも小型類円形を呈するpitの集合からなり,表面陥凹型病変で特徴的に認められる基本的なパターンである。組織学的には腺腫またはM癌である。

 Ⅳ型:pitは溝紋状,樹枝状,脳回転状を呈し,比較的大きな隆起型病変やLST顆粒型病変に認められる。組織学的には腺管の丈が長い腺管絨毛腺腫か絨毛腺腫であり,腺腫内癌を伴うことも多い。またⅡ型と併存する場合はserrated adenomaのこともある。

 Ⅴ型:このpit patternは,ⅢL型,ⅢS型,Ⅳ型のpitが配列の乱れ,大小不同,左右非対称などの不整化したⅤI型と,pitの消失やdesmoplastic reactionの露出による無構造な表面構造となったⅤN型に区分している。Ⅴ型では組織学的にはほとんどが癌であり,特にある領域をもってⅤN型を呈する病変はSM深部浸潤癌と診断できる。ただし,炎症性びらん,潰瘍や粘液が厚く付着した病変では一見無構造様に観察されることがあるので注意を要する。
 またⅤI型に関しては,内腔狭小,辺縁不整,輪郭不明瞭,stromal areaの染色性低下,scratch signを呈するものはⅤI型であってもより深達度の深い病変が示唆される9)。

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