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早期大腸癌の内視鏡治療・外科手術の最前線

内視鏡治療の適応決定のための診断学

Incasion depth diagnosis of early colorectal carcinomas for the determination of endoscopic treatment

斉藤裕輔垂石正樹小澤賢一郎杉山隆治中嶋駿介富永素矢藤谷幹浩

大腸癌FRONTIER Vol.4 No.3, 11-17, 2011

Summary
 内視鏡治療の適応決定のために重要な通常内視鏡所見として,隆起型SM癌では,腫瘍の全体像における緊満所見,内視鏡的硬さ,凹凸不整,腫瘍の表面性状における粗造所見,また,腫瘍周囲の性状における皺襞集中,ひきつれ,孤の硬化,に注目する。表面型SM癌においては,腫瘍の全体像における緊満所見,内視鏡的硬さ,凹凸不整,腫瘍の表面性状における陥凹内隆起,陥凹内の凹凸,粗造,強い発赤所見,また,腫瘍周囲の性状における皺襞集中,ひきつれ,孤の硬化,台状挙上,に注目する。病変発見時には色素散布を積極的に併用し,肉眼型ごとにこれらの通常内視鏡所見が一つ以上みられる場合には外科手術を考慮し,これらの通常内視鏡所見が一つもみられない場合は積極的に内視鏡治療を行うことが効率的と考えられる。また,超音波細径プローブ検査は注腸X線検査,内視鏡検査にはない,病変の断層像を得ることが可能な検査であり,SM浸潤距離の計測も可能であることから,SM深部浸潤癌を疑う場合,またSM浸潤癌に対して内視鏡治療を行おうとする際の垂直断端陽性防止のために追加すべき有用な術前検査である。

Key words
●早期大腸癌 ●深達度診断 ●SM浸潤度1,000μm ●通常内視鏡 ●色素散布 ●超音波細径プローブ

はじめに

 日本人における大腸癌の増加は近年著しく,2003年に大腸癌は癌死亡の原因として男性では第4位に,女性では第1位となり,大腸癌死亡の減少には早期発見がますます重要となっている。なぜなら早期大腸癌の予後は結腸,直腸ともに5年生存率で90%以上と良好であり,外科手術を行うことでほぼ完治可能といっても過言ではないからである。また,近年の内視鏡診断および治療の進歩はめざましく,診断面においては表面型大腸腫瘍の発見をはじめ1,2),超音波細径プローブ(high-frequency ultrasound probe;HFUP)3)やnarrow band imaging(NBI)4,5)を含む拡大内視鏡6)の開発などが,また,治療面では表面型大腸腫瘍に対する内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)の開発・普及1, 7, 8),先進医療として行われている内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)の導入9)などがあげられる。現在,早期大腸癌に対する内視鏡治療が積極的に行われており,患者のquality of life(QOL)の向上に貢献している。一方,早期大腸癌の中でも粘膜下層(SM)癌には約10%程度にリンパ節転移が認められるため10),原則的には外科手術が推奨されている。しかしながら人口の高齢化に伴う合併症の増加に伴い,外科手術不能の患者も増加し,リンパ節転移の危険性が高い病変が発見された場合でも内視鏡治療のみで経過観察を余儀なくされる例も増加しており11),内視鏡治療または外科治療の適応鑑別の他,今後はSM深部浸潤癌に対して,内視鏡的に垂直断端陰性の切除が可能かどうかの術前診断も求められることが予測される。本稿では早期大腸癌における内視鏡治療適応のための通常内視鏡診断および超音波内視鏡(HFUP)診断について解説する。

早期大腸癌における内視鏡治療の適応

 多数の大腸SM癌手術例の病理学的解析により12),大腸SM癌のリンパ節転移の危険因子が検討され,2005年に「大腸癌治療ガイドライン医師用2005年版」が13),2006年に「大腸癌取り扱い規約」(第7版)14)が,さらに2009年には「大腸癌治療ガイドライン医師用2009年版」15)が発刊され,以前と比べて早期大腸癌に対する内視鏡治療の適応が拡大された。発刊から5年以上経過した現在,治療後の患者の中長期経過から,本ガイドラインの妥当性についても多くの施設から妥当であるとの報告がなされている。現状における内視鏡治療の適応条件として,①腺腫,M癌,粘膜下層への軽度浸潤癌(SM浸潤度1,000μm未満),②最大径2cm未満,③肉眼型は問わない,とされている(図1)。

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