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次期改訂に向けて~大腸癌治療ガイドラインの問題点と今後の方向性

大腸癌治療ガイドラインの功罪

Review and revision of Japanese Guideline for colorectal cancer Inspection of Japanese Guideline for colorectal cancer

山口研成原浩樹門脇重憲朝山雅子多田正弘

大腸癌FRONTIER Vol.4 No.2, 39-43, 2011

Summary
 大腸癌治療ガイドラインは医療が多様化,専門化する中で標準的な治療を示し本邦の医療全体の向上をはかるものとして策定されている。化学療法の部分をみると,2010年版での改訂における大きな変更は,抗EGFR抗体のパニツムマブが承認されたとともに収載されたこと,その使用においてKRAS遺伝子検査が保険収載され,野生型/変異型による治療戦略の違いが明示されたこと,そして一次治療からの使用についても収載されたことである。
 以前のガイドラインから比べて,治療選択が複雑になってきたことは否めないものの,それだけ患者の病態にあったものを提供できる可能性が向上したものと前向きに受け止めるべきであろう。その分,ガイドラインを「考えて」用いる必要が出てきた。特に,転移巣を縮小させて切除にもって行くconversion therapyにおいては,いまだ適切なレジメンのコンセンサスは固まっていない。
 ガイドラインが本邦の日常診療にとって有益なものであることは疑いもないことであるが,数ある選択種の中で何を用いて治療していくか,臨床医も見識をもってガイドラインを活用していく必要があろう。

Key words
●大腸癌 ●化学療法 ●分子標的薬 ●KRAS遺伝子検査 ●治療アルゴリズム

はじめに

 大腸癌は本邦において罹患数,死亡数とも増加している。死亡数においては頭打ちの傾向がみられるものの罹患数は依然増加が続いている。したがって,治療法の向上が急務な癌の一つである(図1)。

 大腸癌化学療法は,10年前の切除不能患者における約1年の生存期間中央値が,現在の分子標的薬剤の開発により,2年にも達しようとしている。また,エビデンスに基づいた形で,一次治療,二次治療,三次治療といった戦略が確立してきており,近年では血行性転移を有する患者でも切除と化学療法を組み合わせた戦略が提唱されている。したがって,適切な抗がん剤治療を行えるかが,治療成績を大きく左右するようになってきた。
 ガイドラインは,医療が多様化,専門化する中で,大腸癌の診療に従事する医師を対象として,大腸癌の標準的な治療方針を示し,大腸癌治療の施設間格差をなくし,過剰診療・治療,過小診療・治療をなくすこと,そしてその内容を一般に公開し,医療者と患者の相互理解を深めることを目的として作成されている。
 全身状態のよい患者における一次抗がん剤治療の選択では,イリノテカンベース(FOLFIRI)とオキサリプラチンベース(FOLFOX/CapeOX)の治療,上乗せする分子標的に抗VEGF抗体を用いるか,抗EGFR抗体を用いるかの2×2の組み合わせが存在し,実際ガイドライン上も4通りの一次治療が存在している。
 これを列記したことを,罪という意見もあるが,この意見はあまりにガイドライン作成の苦労を知らなすぎる意見といわざるを得ない。
 ガイドラインは今までの臨床研究から得られたエビデンスに,実臨床の実態,保険償還などわれわれの置かれている医療環境を加味して,かつ学会等から指名された複数の代表者のコンセンサスをもとに作られる。このガイドラインが制定されたことによって,患者への説明が明確化してきた。すなわち,ガイドラインに合致している戦略においては一定の本邦のコンセンサスが得られていることが保証されているということであり,ガイドラインからあえて外れる場合には,なぜ外れる選択をするか患者に説明し,納得がいかない場合はセカンドオピニオンをとってもらえばよいという方向性が明示されたといえる。
 したがって,ガイドラインができたことに対して功はあるが罪はないといえる。

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