Summary  大腸癌治療ガイドラインは医療が多様化,専門化する中で標準的な治療を示し本邦の医療全体の向上をはかるものとして策定されている。化学療法の部分をみると,2010年版での改訂における大きな変更は,抗EGFR抗体のパニツムマブが承認されたとともに収載されたこと,その使用においてKRAS遺伝子検査が保険収載され,野生型/変異型による治療戦略の違いが明示されたこと,そして一次治療からの使用についても収載されたことである。  以前のガイドラインから比べて,治療選択が複雑になってきたことは否めないものの,それだけ患者の病態にあったものを提供できる可能性が向上したものと前向きに受け止めるべきであろう。その分,ガイドラインを「考えて」用いる必要が出てきた。特に,転移巣を縮小させて切除にもって行くconversion therapyにおいては,いまだ適切なレジメンのコンセンサスは固まっていない。  ガイドラインが本邦の日常診療にとって有益なものであることは疑いもないことであるが,数ある選択種の中で何を用いて治療していくか,臨床医も見識をもってガイドラインを活用していく必要があろう。