全文記事
大腸癌の分子生物学
大腸癌の腺管形成と転移
掲載誌
大腸癌FRONTIER
Vol.3 No.3 75-80,
2010
著者名
川又均
/
今井裕
/
藤盛 孝博
記事体裁
連載
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全文記事
疾患領域
消化器
/
癌
診療科目
一般外科
/
消化器内科
/
腫瘍内科
/
消化器外科
媒体
大腸癌FRONTIER
「Summary」大腸癌同時性肝転移症例24例と非肝転移症例24例における分化度, tight junctionタンパク質ZO-1の発現パターンを検索した. 原発巣においては肝転移を示した症例は, 肝転移を示さなかった症例と比較して有意に分化度の低下, ZO-1の発現低下が認められた. さらに, 肝転移を示した症例においては, 原発巣でみられた分化度の低下, ZO-1発現低下が, 肝転移巣で有意に回復していた. 免疫沈降―Western blottingにてZO-1は上皮増殖因子受容体(EGFR)に結合していることが示され, 肝転移を示した大腸癌症例原発巣においてのみEGFRに結合したZO-1はチロシンリン酸化されていた. 以上より, 肝転移を示す大腸癌細胞は原発巣において活性化されたEGFRがZO-1をチロシンリン酸化し, その機能を低下させ, 脱分化(dedifferentiation)を誘導し, 浸潤・転移を促進すると考えられる. 一方, 肝転移巣においてEGFRは活性化しておらず, ZO-1のチロシンリン酸化状態も非リン酸化状態に復帰し接着因子としての機能が回復し, 再分化(redifferentiation), すなわち再腺管形成が引き起こされたと考えられる.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。