全文記事
大腸癌の分子生物学
癌の転移とEpithelial-mesenchymal transition
掲載誌
大腸癌FRONTIER
Vol.2 No.1 59-64,
2009
著者名
岩槻政晃
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三森功士
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石井 秀始
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馬場 秀夫
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森 正樹
記事体裁
連載
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全文記事
疾患領域
癌
診療科目
一般外科
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産婦人科
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消化器内科
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腫瘍内科
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消化器外科
媒体
大腸癌FRONTIER
「Summary」 発生学から生じた上皮-間葉系転換(EMT)の概念は, 近年, 癌浸潤・転移機構と共通する分子機構が見い出され, その応用が多く研究されている. EMTを起こした癌細胞は高度な浸潤能を獲得する. さらに癌間質へ浸潤し癌微小環境へ影響を与え, 浸潤・転移に有利な環境をつくる. また, EMTを獲得した癌細胞は薬剤耐性を示し, 治療後の再発・転移に深くかかわることが推測される. 発癌, 浸潤, 転移, 再発, 治療抵抗性といった癌の難治性を規定する因子の多くに深くかかわると思われるEMTという概念は, 近年急速に研究が進められてきているが, いまだ解明されていない部分も多い. 本稿では, 癌におけるEMTの重要性を最新の知見をもとに概説したい. 「はじめに」 癌の遠隔転移は, 腫瘍進展の最終段階であり患者の予後を規定する因子である. これまでに多くの浸潤・転移のメカニズムについての研究がなされてきた. 現在, 癌の転移の過程はLiottaらが提唱した古典的モデルのように, (1)癌細胞の原発巣からの離脱, (2)癌細胞の間質への浸潤および脈管内への侵入, (3)癌細胞の脈管内での生存と標的転移臓器への移動, (4)標的臓器血管内皮への接着, 血管外への遊走, (5)標的臓器への生着と増殖という多段階からなるといわれている1).
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。