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てんかん最前線

てんかんの遺伝子治療

村松慎一

Epilepsy Vol.16 No.1, 37-41, 2022

細胞に核酸(DNA,RNA)を導入することにより,失われた機能の修復を図るという遺伝子治療のアイデアは半世紀前に提唱されていたが1),当初はヒトの細胞に核酸を効率よく導入し長期に発現させる方法がなかった.しかし,その後のバイオテクノロジーの発展により優れた遺伝子導入ベクターが開発され急速に遺伝子治療の実用化が進んでいる2).遺伝子治療には,体外で培養した造血幹細胞などに遺伝子を導入し体内に戻す体外(ex vivo)法と,体内の脳,肝臓,筋肉などに直接,遺伝子を送達する体内(in vivo)法があり,種々の技術が開発されている.なかでも,もともと自己のゲノム核酸を感染した細胞に送り込むウイルスを改変したベクターの進歩が大きく寄与している.中枢神経への遺伝子導入ではアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus:AAV)由来のベクターが主流となっており,わが国でも小児の脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)1型を対象として,SMN1遺伝子を発現するAAV製剤(オナセムノゲン アベパルボベク)が2020年3月に薬事承認され,1人当たり1億6,700万円という高価格にもかかわらず2021年12月時点で49人に投与されている.
てんかんに対しては,AAVベクターを応用して種々の分子をモデル動物の神経細胞で発現する非臨床研究が行われ,有望な結果が得られている3)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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