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Special Articles(Epilepsy)

結節性硬化症とてんかん:最新の進歩

九鬼一郎

Epilepsy Vol.14 No.2, 11-18, 2020

結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC)は,全身臓器(脳,腎臓,肺,皮膚,眼球など)に過誤腫が形成される常染色体優性遺伝形式をとる神経皮膚症候群である.原因遺伝子であるTSC1遺伝子またはTSC2遺伝子に機能喪失変異が生じることにより発病する.これらの遺伝子産物は複合体を形成してmTOR(mammalian target of rapamycin)シグナル伝達系の抑制的な役割を担う.mTORシグナル伝達系は細胞分裂や血管新生に関連するといわれており,結節性硬化症ではその抑制機構が低下しmTOR活性が上昇することで,過誤腫性の病変や細胞増殖亢進による腫瘍形成などが多臓器に生じ,多彩な症状が全身性に出現する1).全身臓器に病変が出現する可能性があるが,その病変および症状が年齢依存性にあらわれ,また個人差が大きいため,個々の患者にあわせたマネジメントが必要となる2)
中枢神経系において結節性硬化症で認められる代表的な画像所見としては,上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma:SEGA),上衣下結節などがあり,てんかん領域では大脳皮質結節が最も重要である.皮質結節は数・大きさ・分布・石灰化の有無など患者ごとに多彩で,びまん性の病変からMRIでは同定しにくい微細な病変まで幅が広く,家族例でも差がある(自験例を図1に示す).結節性硬化症患者において,てんかんは発達や知能などの認知機能や生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼす重要な合併症である.結節性硬化症患者で頻繁に認められる,攻撃的な行動,発達障害や知的障害,多彩な精神症状,学校や職場での困難さを示す状態を包括した概念として,結節性硬化症関連精神神経症状(TSC-associated neuropsychiatric disorders:TAND)が提唱されており,てんかんとのあいだに疫学的な強い相関関係がみられる.本稿では,主にてんかんに関連した内容に絞って,最新の知見を含めて概説する.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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