シナプスという微細構造体は,神経細胞と神経細胞をつないでいるものである.刺激がシナプス前神経に伝わると,神経伝達物質がシナプス終末から放出され,放出された神経伝達物質はシナプス後神経のシナプス後膜にある受容体に結合する.その結果,イオンチャネルを形成している受容体が開き,イオンが細胞内に流入することにより情報が伝達される.グルタミン酸は,脳内の興奮性シナプスの大半を占めるといわれているグルタミン酸シナプスの情報伝達を仲介する神経伝達物質であり,それを受け取る複数のグルタミン酸受容体のひとつがAMPA受容体(α-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropionic acid receptor)である.AMPA受容体は興奮性神経伝達において特に重要な役割を担っている1, 2).AMPA受容体は神経機能を実質的に仲介している分子であり,ほとんどの神経機能発現のメディエーターであると考えられている.これまでの基礎研究から,AMPA受容体の機能の破綻が多くの精神神経疾患にかかわっていることが明らかになっている.その一方で,これまで蓄積された多くの知見が臨床応用に結び付いている例はきわめてまれである3-6).2016年,AMPA受容体作動薬として,はじめての薬剤となるペランパネル水和物(以下,ペランパネル)が,わが国において抗てんかん薬として上市された.ペランパネルはAMPA受容体の機能を抑制する拮抗薬である7-11).脳内神経細胞の異常発火により,てんかんは発生する.興奮性シナプスの機能を仲介するAMPA受容体の異常とてんかんとの関連は,てんかん患者脳組織の解析から示唆されてきた12).神経機能発現を中核的に担っているAMPA受容体は他の精神神経疾患にもかかわっている可能性もあり,ペランパネルが治療薬となりうる疾患はてんかん以外にも多く存在すると期待される.
Special Articles(Epilepsy)
②精神神経疾患,特にてんかんとAMPA受容体
掲載誌
Epilepsy
Vol.13 No.2 17-22,
2019
著者名
高橋琢哉
記事体裁
連載
/
抄録
疾患領域
神経疾患
診療科目
脳神経外科
/
神経内科
媒体
Epilepsy
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。