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てんかん最前線

心因性非てんかん性発作を診る

山田了士

Epilepsy Vol.13 No.1, 31-36, 2019

心因性非てんかん性発作(psychogenic non-epileptic seizures:PNES)は,てんかん発作に似ているが,てんかんを示唆する臨床・脳波所見がなく,また他の身体的・生理的な病態もない,何らかの心理的背景が推定される発作である.心因はいつも特定できるわけではなく,広義の精神療法的アプローチが有用だという治療論的な意味合いもある.以前に使われていた偽発作(pseudoseizure)という病名は「本当の病気でない」「わざと起こす発作」というような誤解につながりうるため使用されなくなった.しかし,まだてんかん診療医以外では偽発作という言葉が使われることがある.
PNESは,てんかんを疑われて専門施設を受診する患者の5~20%に診断されるといわれ,てんかんモニタリングのため入院している患者ではさらに頻度が高くなるなど,てんかんの鑑別診断では最も重要なもののひとつである1).初発発作から正しく診断されるまで平均7.2年を要し,なかには20年以上かかる例もある2).この間,患者はてんかんとして治療されるものの効果が得られず,度々入院や検査をくりかえす.30分以上続くような重積型のPNESでは,その3割近くが救命救急病棟で集中治療を受けることもある3).自験でも,自己免疫脳炎を疑われて集中治療室で挿管のうえ,血漿交換などの免疫療法を受けた症例がある.また抗てんかん薬が増え,副作用のため認知機能が低下し,社会機能も悪化してさらにPNESが悪化するという悪循環に陥ることが多い.これらは見かけ上の難治性てんかんとなり,てんかん専門施設での診断確定が必要なケースが多い.
一方で,PNESとてんかんは,しばしば併存もする.最近のメタアナリシスでは,PNESの22%にてんかんを,逆にてんかんの12%にPNESが合併するという4).知的障害もPNESの20~40%程度に合併し,治療面で重要な因子である1)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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