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高齢発症てんかんの記憶障害~健忘発作をめぐって

Epilepsy Vol.12 No.2, 23-27, 2018

体験されたエピソードは,脳内で符号化のあと活性化を受けつつ長期記憶として固定化(貯蔵)され,検索により想起される.このプロセスを主に担う脳構造としては,内側側頭葉(海馬,嗅内野,嗅周野,海馬傍皮質,扁桃体)と関連新皮質が知られている.最近の(恐怖)記憶の実験では,海馬・嗅内皮質(と扁桃体)における学習早期に前頭前野皮質に記憶の蓄積が開始され,時間とともに固定化が成熟し,それとともに海馬の関与は少なくなって行くという1).ただ,経過のなかで海馬がどこまで関与するのかについては議論が分かれている.また固定化にかかわる領域,検索にかかる過程についても議論がある.
側頭葉てんかんでは,発作の多くは内側・外側の側頭葉を巻き込み,さらには対側側頭葉や周辺脳領域にも及ぶ.発作後には発作の起始した(あるいは発作に深く関与した)側頭葉に一過性の機能脱落がみられ,また発作間欠時にはてんかん性機能障害の影響が側頭葉のみならず周辺領域に及ぶことがある.記憶を担うシステムがこのような機能障害に巻き込まれる側頭葉てんかんでは,記憶障害は,周発作時,発作間欠時の主要症状のひとつである.
てんかん原性を生じる基礎病変は種々であるが,周発作時および発作間欠時のてんかん性記憶障害を生じる機序は共通している.粗大な基礎疾患がない側頭葉てんかんで,運動症状や他の認知障害が目立たず記憶障害が前景にある発作では,この機序を理解しやすい.健忘発作はその典型で,近年,高齢発症のてんかんで話題になることが多い.高齢発症のてんかんでは側頭葉てんかんが最も多いため,てんかん性の記憶障害を理解することは他の疾患との鑑別診断上も重要である.本稿では,基礎疾患の明らかでない高齢発症のてんかんでみられる健忘発作を手がかりに,てんかんのエピソード記憶の障害について展望する.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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抄録