診断と治療(Epilepsy)
Down症候群と遅発性てんかん
掲載誌
Epilepsy
Vol.10 No.2 27-32,
2016
著者名
荒木邦彦
/
池田仁
/
勝野 雅央
記事体裁
抄録
疾患領域
神経疾患
診療科目
神経内科
媒体
Epilepsy
Down症候群は最も一般的な染色体異常(21番染色体トリソミー)のひとつで,出生1万人あたり5.82人の発生率と推定され,高齢出産にともない増加を認める1).Down症候群にともなうてんかんの有病率は1.4%で一般人口と変わりないが2),加齢とともに増加し,35歳以上では12.2%に達し3),50歳以降では46%が有する4).てんかんの発病率は,生後1歳までに40%,30歳以降に40%を占め,二峰性分布をとる5).静岡てんかん・神経医療センターに受診歴のあるDown症候群38症例を対象として,後方視的にてんかんの有無・発症時年齢・発作型・脳波・画像・治療反応性を解析した報告6)では,38症例中31例がてんかんと診断され,29例で発症時年齢が特定できた.発症時年齢によって,①乳幼児発症群(2~29カ月);15例,②若年発症群(10~24歳);11例,③中年発症群(39~56歳,遅発性てんかん);3例の3つの群に分けられ,各群はある程度共通した臨床的特徴を有していた.乳幼児発症群の発作型はほとんどがスパズムであり,初期治療で多くが寛解を認める.その一方で,再発し症候性全般てんかんへ移行する例も少数みられた.若年症候群の発作型は間代,ミオクローヌス,強直,脱力,強直間代など多彩であり,発作による転倒が高率にみられた.反射発作が3例でみられ,予期せぬ音や接触,つまずきなどにより誘発された.ほとんどが治療抵抗性で難治であった.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。