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てんかんからみる人物の横顔~異論異説のてんかん史~

第11回 症例 H.M.

松浦雅人

Epilepsy Vol.6 No.1, 49-53, 2012

MITの利根川進教授は「一人の患者, 一人の人間が, 記憶研究にこれほどまで貢献したことは驚くべきことだ」と語った. 「はじめに」 症例H.M.は脳科学の分野で最も研究された患者で, 特に記憶のメカニズムの解明に多大な貢献をした. H.M.は27歳の時, 難治性てんかんのために両側海馬と扁桃体を含む内側側頭葉切除術を受け, 特異な記憶障害を生じた. 手術直後の1953年よりモントリオール神経研究所で神経心理学的精査を受け, 1957年に発表されたH.M.に関する最初の報告は, その後2500回も引用される画期的な論文1)となった. 1966年からは主にマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology ; MIT)でさまざまな精査を受け, H.M.にかかわった神経心理学者や脳科学者は100人以上にのぼった. 生前はプライバシーに配慮して本名は公開されなかったが, 2008年12月2日に亡くなったあと, ニューヨークタイムズ紙が追悼記事を掲載し, 本名がHenry Gustav Molaisonであると明かした.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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