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診断(Epilepsy)

Wadaテストによる言語・記憶機能検査

―てんかん外科の手術前検査における役割― The role of the Wada test in the surgical treatment of epilepsy

臼井桂子寺田清人井上有史

Epilepsy Vol.5 No.2, 29-35, 2011

はじめに
 Wadaテストは内頚動脈アモバルビタール法とも呼ばれるものであり,言語優位半球の同定を可能にする有力な検査法として,1948年にJuhn Wada(和田淳)博士により開発された.この翌年,雑誌『医学生物学』に発表された論文1)はすぐ英訳され,Wadaテストが世界中で実施されるようになった.その後,言語機能のみならず記憶機能検査においても使用されるようになり,今日に至っている2,3).てんかん外科における手術前検査としては,言語,記憶機能の評価だけではなく,てんかん原性領域の側方性の同定4)や,術後発作転帰の予測5)など,多様な脳機能検査に威力を発揮してきた.

はじめに(続き)

 Wadaテストは,現在,言語優位半球の同定法として最も信頼度の高い検査である.しかし,21世紀に入って,アモバルビタールが入手困難になったこと,ならびに磁気共鳴イメージング(magnetic resonance imaging;MRI),脳磁図(magnetoencephalography;MEG)をはじめとする非侵襲的検査手法の技術向上による脳機能評価法の拡大によって,Wadaテストの位置付けあるいは意義に変化が生じ始めている.
 本稿では,Wadaテストを主としててんかん外科治療の観点から,その実際の内容をやや詳細に概観するとともに,世界での使用状況と趨勢を展望する.さらにWadaテストの代替検査として行われている非侵襲的手法についても言及する.

一般的なテスト内容と主要な特長

 概略としては,脳血管造影検査用に挿入されたカテーテル(通常,大腿動脈から挿入)を頭頚部まで進め,左または右内頚動脈から麻酔薬を注入して同側大脳半球を一過性に不活化することにより,脳機能局在の確認を行う方法である.50年以上にわたって世界中で広く実施されている検査法であることから,共通の統一された実施手順が存在するものと思われがちであるが,実際には多くのバリエーションが存在する.言語優位半球の同定のみならず,記憶機能検査,さらにはてんかん外科手術前検査など多様な用途に使用されていることから,詳細な部分に関しては施設ごとに異なっている場合が多い.
 紙面の制約を勘案し,ここではこれらの多様なバリエーションには言及せず,多くの施設で実施されている,言語と記憶機能検査としてのWadaテストの基本と共通的な技術について述べることにする.

1.Wadaテストの手順(表1)

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