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Special Articles(Epilepsy)

ピアカウンセリング

髙畑隆

Epilepsy Vol.5 No.2, 23-27, 2011

はじめに
 患者や障害者の自立支援では,専門職の支援だけではなく,当事者同士の仲間(ピア:peer)の支援が重要となっている.患者会活動は,セルフヘルプグループ(self-help group;SHG)といわれ,同じ体験者による支え合い活動である.患者会では,患者同士が支え合うピアカウンセリング(peer-counseling)が注目されている.人には知識だけでなく感情があり,1人ではなく集団に所属し,社会関係や社会役割を遂行する存在である.そして,人は多様な行動をするなかで,防衛機制を働かせて自らの存在を守ろうとする.しかし,人は病気になると元気が出なくなりパワーレスの状態になる.その時,同じ体験者の仲間による支援はとても重要である.患者や障害者には体験者でないとわからない生活実感があるからである.ピアカウンセリングは,この実感を仲間同士の話し合いを通し自立へと支援する活動である.

Key Words
セルフヘルプグループself-help group/ピアカウンセリングpeer-counseling/ピアサポートpeer-support/体験的知識experiential knowledge

はじめに(続き)

 ピアカウンセリングは,学校教育現場,女性のフェミニスト・カウンセリング,高齢者のシニア・ピアカウンセリング,あるいは不妊やがん,不登校やいじめなど,さまざまな悩みを抱える人々の活動として行われている.本稿は,患者会,障害者団体で行われているピアカウンセリング活動について述べる.また,より広い概念のピアサポートについても言及する.

1 セルフヘルプグループ(SHG)

 ピアカウンセリングは,患者会や障害者団体の活動で行われている.患者会や障害者団体はSHGといわれ,同じ問題をもった人々が集まり,1人で解決できない問題を話し合い,共有し,解決の手がかりを模索し,自立生活を支援するマイノリティのグループ活動である.
 この活動は,1930年代のAA(Alcoholics Anonymous®)が起源といわれ,さまざまな社会活動の影響を受けている.1960年代は,人種問題,市民運動,公民権運動,反戦運動,消費者運動,学生運動,女性解放運動,環境保全運動の影響があった.1970年代には,権利擁護運動,草の根市民活動などの影響があった.健康問題では従来の専門的サービスに対し,セルフケア運動(脱医療)や脱施設化がある.SHGは,生活の困難や問題をもつ人々が社会の抑圧から解放され,権利や主体性を回復する当事者主権への活動でもある.当初,SHGは専門職から拒否的,批判的に受け取られた.その後,専門職はその存在意義を認め,活用できる資源として位置付け,最近はパートナーシップ活動になっている.
 SHGは,同じ体験をした人たちがグループで話し合い,お互いを助け合う(自助,互助,共助)活動である.SHGの特徴は,主体的参加,対等性,民主主義,対面性,相互作用である.リースマン(1965)は,SHGの価値を「ヘルパーセラピー原則(“helpertherapy”principles)」と「非専門性(市民性・素人性)」としている.ヘルパーセラピー原則とは,「他者を援助する者が最も援助される(Helping You Helps Me)」ことである.その活動目標は,民主主義の具体化と個人の成長,自己実現,社会変革である.話し合いは,仲間と辛さを表現し,仲間に伝え,仲間と気持ちを交流させ,自己を再評価し,自己を見つめ直す過程である.その過程で,人は自らの気持ちを「わかちあい,ひとりだち,ときはなち」,生きる力を回復させる1).そして,同じ体験者の体験を会で詳しく調査し「体験的知識(experiential knowledge)」として蓄積する.この体験は,経験よりもずっと重く,深い内容,意味や価値,生活実感がある.体験的知識は個人の体験を患者会がグループとして詳しく調査し,蓄積して積み上げた知識であり,生活体験から生まれた知恵である.この体験的知識は,専門的知識に匹敵する知識である.SHGでは,同じ仲間の先輩から体験を聞くことで少し先のモデルとして見通せ,自己のなかに新しい価値観を生み,自己の価値観を変革し,前向きに生きる力が湧いてくる.これは,患者会として当事者が生きやすい社会作りへ向けた社会変革活動にもつながる2).例えば,体験的知識を専門職と協働してかたちにしたものに,『患者と作る医学の教科書』がある3).セルフヘルプ情報支援センターであるスタイリッシュ宮崎では,SHGを理解しやすくマンガにして,ホームページで紹介している4)

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