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目でみるてんかん

高磁場3T-MRIによる焦点診断

橋口公章森岡隆人

Epilepsy Vol.5 No.2, 4-7, 2011

1 はじめに
 症候性局在関連てんかんの焦点診断におけるmagnetic resonance imaging(MRI)の役割は非常に大きく,MRIによる構造異常域の診断はてんかん外科の術後転帰を左右する最も大きな因子のひとつである1).1990年代初頭における1.5tesla(T)-MRIの導入,そして撮像法としてのfluid attenuated inversion recovery(FLAIR)法のてんかん診断への応用により,MRIの重要性が飛躍的に増したことはいうまでもない2-4).2000年代に入り,3T-MRIの臨床応用が可能になり,てんかん患者に対しても用いられている5),6).ここでは,3T-MRIの特徴と,そのてんかん焦点診断への応用の現状について述べる.

2 高磁場MRIの特徴

 MRIは,磁場強度が高くなることにより利点が増える一方で,いくつかの欠点も生じるので,高磁場の特徴を理解することが重要である.高磁場MRIの特徴として信号雑音比(signal-to noise ratio;SNR)の向上,T1緩和時間の延長,磁化率効果の増強,化学シフトの増大などが挙げられ,このため造影MRIやfunctional MRI(fMRI),MR spectroscopy(MRS),MR angiography(MRA)などでは高磁場のメリットが高いとされる.とりわけ,SNRの向上は高磁場MRIの最大の利点で,同一時間ではより高分解能の画像撮像(薄いスライス厚,高いマトリクス,小さなFOV)が可能になり,また同等の画像を撮るための時間は,理論上4分の1に短縮される.
 磁化率効果の増強に伴う欠点として,磁化率アーチファクトの増強により画像の歪みが生じる.側頭葉は頭蓋底に近いため磁化率アーチファクトが出やすく,この点は側頭葉てんかんの焦点診断に不利益を及ぼす可能性がある7).
 3T-MRIでは,specific absorption rate(SAR)が1.5T-MRIの4倍になる.SARはRF信号が人体に与える吸収熱エネルギーの大きさを表し,静磁場強度やflip angleの2乗に比例して増加するため,撮像時間や撮像方法に制限が生じる.
 頭部領域は高磁場の利点を最も生かせる領域といえる.てんかんの焦点診断において,その利点をいかに活用するかが問われる.

3 磁場強度の違いによる同一シークエンス(主にFLAIR)の比較

 てんかん焦点診断における最も重要なシークエンスのひとつとして,FLAIRが挙げられる.1.5T-MRI FLAIRによる海馬硬化症の診断能は90%以上と高い2,3).われわれは海馬切除例13例において,1.5Tと3T-MRIのFLAIRを同時期に撮像し,海馬所見を比較したところ,両者の海馬萎縮および高信号域の診断能に明らかな差を認めなかった(図1左,中央)7).

ほかの報告でも,海馬容積に関して,1.5Tと3Tの比較では有意な差はないとされている8,9).MRIにおける海馬の信号変化は病理学的なgliosis,あるいは神経細胞脱落の程度と相関するとされるが5,7,10,11),1.5T-MRIは病理学的海馬硬化の検出に十分な感度を有しており,一方で病理学的変化の軽微な症例の検出は3T-MRIをもってしても容易でない.
 海馬硬化症以外の病態を含めて1.5Tと3T-MRIを比較した報告については,その評価方法も結果もまちまちで,必ずしも3T-MRIが優っているとはいえない(図2A,B)12-15).

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