高度先進医療に指定されて以降,「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は多くの眼科領域のなかでも特殊な立ち位置となっている。筆者は屈折矯正手術を専門とするが,自費診療における「満足度」の大切さを痛感し腐心してきた。患者満足度を高めるためには,予約・接遇・術後の対応などが1つのパッケージとなって機能しなければならず,それがクリニック全体に浸透するまでには数年の時間を要する。一方で,多焦点眼内レンズを扱う一般眼科施設は550以上となり,現在も増え続けている。
言うまでもなく,多焦点眼内レンズ手術は自費手術である。一方で保険会社がその特約条項により診療費を給付するかどうかは,医療行為には直接の関係はない。「保険会社が費用を払うのだから,それほど強いクレームにはならないのではないか」という考え方は間違いである。自費手術における患者満足度は,その治療が継続的に続けていけるかどうかの生命線なのである。今回は,多焦点眼内レンズ手術のケアにおいて,ドライアイ対策を中心とした患者満足度の向上という視点で述べてみたい。
「KEY WORDS」多焦点眼内レンズ,ドライアイ,回折型の構造,涙液過多,実用視力