障害された涙腺の機能を再生する涙腺再生医療の戦略の1つは,生体外で立体的な涙腺を再生し,移植する器官再生医療である。涙腺は,胎生期の眼上皮における上皮間葉相互作用により起こる涙腺原基から発生する。未熟な涙腺上皮とも言える胎生期涙腺上皮細胞は,涙腺を構成する腺房や導管,筋上皮すべてに分化することが可能であり,かつ,in vitroにおける三次元細胞操作により涙腺の立体的構造を再生することができる1)2)。そのため,多能性幹細胞から胎生期涙腺上皮様細胞を分化誘導し,涙腺を再生することが期待されるが,胎生期涙腺上皮の細胞特性は明らかでなく,その分化マーカーは確立されていない。そこで本研究では,胎生期涙腺上皮の細胞特性の一端を明らかとするために,マウスを用いて涙腺発生過程におけるサイトケラチン(KRT)の局在の変化を解析し,涙腺発生において胎生期涙腺上皮に特異的に発現するKRTを同定した。さらに,そのKRTを発現する細胞が成熟涙腺において,傍導管上皮周囲基底部に存在することを初めて報告した。
「KEY WORDS」涙腺/ドライアイ/再生医療/組織幹細胞/サイトケラチン