消化性潰瘍の多くは,ヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ)感染かNSAIDs(nonsteroidal anti-inflammatory drugs)などの薬剤に起因するが,最近,ピロリ陰性かつ薬剤の既往例のない消化性潰瘍が増加している。Helicobacter pylori-negative and NSAIDs-negative peptic ulcerあるいはidiopathic peptic ulcer(IPU)と呼ばれ1)2),ピロリ感染率の低下とともにその頻度の増加が指摘されている。その頻度は北米では消化性潰瘍のうち20~40%,国内でも10~30%と報告されている1)
IPUの臨床的特徴は出血を主訴とすることが多く,また,再出血や再発の頻度が高く3)4),発生部位は十二指腸に比べわが国では胃に多い5)。IPUに関する報告は多いが,ピロリ陽性潰瘍やNSAIDs潰瘍との臨床像を比較したものが大半で,意外と内視鏡所見を検討したものは少ない。今回,IPUの1例を経験したので,内視鏡像と臨床経過を提示するとともに,若干の考察を加え報告する。