わが国におけるH. pylori の主な感染時期は5歳頃までの乳幼児期であり,家族内感染,特に母子感染の報告が最も多い。慢性胃炎から胃癌発症に進行するリスクを早期に排除するためにも,若年者を対象とした感染検査や除菌治療の重要性が問われている。
わが国のH. pylori 感染率は,1970年代以降の上下水道の整備によって低下を続け,1950年以前の40%以上に対し,1970年代で20%,1980年代は12%と大幅に低下している。感染率の低下に伴い,40歳代以下の胃癌死亡者数も,1970~2010年の間に6分の1にまで減少している一方,2010年以降,年間1,000~1,200人が死亡している。