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特集 わが国のNSAIDs起因性消化管傷害

巻頭言

浅香正博

THE GI FOREFRONT Vol.10 No.1, 11, 2014

H.pylori除菌が胃・十二指腸潰瘍に保険適用となったのが2000年. この原因療法の普及により, 胃・十二指腸潰瘍の発生頻度がわが国で激減してきている. 保険適用以降10年間余で, 胃・十二指腸潰瘍全体で57%, 十二指腸潰瘍に限定すると75%もの減少がみられている. H.pylori由来の胃・十二指腸潰瘍はこれからも減少を続けていき, 十二指腸潰瘍に至ってはここ20年以内にわが国から姿を消すのではないかと推測されている. H.pyloriに代わって胃・十二指腸潰瘍の原因として近年クローズアップされてきたのが低用量アスピリンを含むNSAIDsである. 薬剤由来であるから, 予防の根本は服薬中止である. しかしながら, NSAIDsは鎮痛に, また低用量アスピリンは血栓症の予防に必要欠くべからざるものであるから, 簡単に服薬中止ができないという大きな問題点がある. これまでわが国から発信できるNSAIDs潰瘍に関する疫学的データは驚くほど少なかった. 1991年に報告された日本リウマチ財団と日本消化器内視鏡学会との合同調査が唯一である. 私もこの調査に参加していたので, この調査結果の衝撃は今も忘れられない. 1008例の長期NSAIDs投与患者に対し, 内視鏡検査を施行したところ胃潰瘍が156例(15.5%), 十二指腸潰瘍が16例(1.9%)に発見されたのである. この調査が行われるまでNSAIDs潰瘍について関心を示していたわが国の研究者は極めて少なかったといえる. この後, NSAIDs潰瘍の成因や予防に関してわが国からも多くの研究発表がなされるようになった. 今回, それぞれのエキスパートにNSAIDs研究の最先端について具体的にわかりやすい記載をお願いした. 本号では, 座談会もNSAIDs潰瘍関連の話題が議論されており, じっくりと読まれてNSAIDsによる消化管病変発生について今一度考えていただきたい.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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