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特集 胃炎に除菌の適応拡大が通ったあとの胃癌撲滅計画―第18回JAPANGAST Study Groupハイライト―

巻頭言

浅香正博

THE GI FOREFRONT Vol.9 No.2, 11, 2014

今回のJGSGは例年にも増して熱い盛り上がりをみせた. JGSG会員の総意である慢性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)へのH.pylori除菌が2013年の2月21日に保険適用になったからである. わが国で3,500万人あまりも感染しているヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に除菌療法が保険で認められた意義は限りなく大きい. ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎はH.pylori感染に対する生体の防御反応として出現するのであるが, その結果IL-1, IL-8など炎症性サイトカインを呼び集め, 胃粘膜の炎症がさらに波及していく. ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が長く続くと萎縮性胃炎に移行していき, その一部が分化型の胃癌に発展することが明らかになっている. ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は胃・十二指腸潰瘍, 胃MALTリンパ腫, 機能性胃腸症(FD), 胃の過形成ポリープ, 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)や未分化型胃癌とも密接に関連している. したがって, ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎を除菌で改善させることにより, 胃癌をはじめほとんどの胃の病気が予防できる可能性が高くなってきたのである. しかしながら, 一般市民へこの事実をわかりやすく伝え, 多くのH.pylori陽性者が医療機関を受診してくれなければ除菌適用拡大の意味はなくなってしまう. 慢性胃炎に対する除菌の保険適用拡大への道のりも長かったが, 除菌による胃癌を中心とする胃の病気の発生抑制へのこれからの道はさらに長く険しいものとなることをしっかりと自覚し, 医師のみならずコメディカル, 医師会, 保健所, 行政, マスコミなどとがっちりスクラムを組んで取り組んでいくことが必要と思われる. 今回のJGSGは, この点を鑑み, 保険適用後の胃癌撲滅計画について徹底的に議論を行うことにした. State of the Art Lectureは京都大学の千葉先生に大腸癌の幹細胞研究の最前線について話していただいた. JGSGの次なる大きなテーマは大腸癌になる可能性が高いのである.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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