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特集 肝炎・肝癌との比較で胃炎・胃癌対策を考える―第16回JAPANGAST Study Groupハイライト―

巻頭言

浅香正博

THE GI FOREFRONT Vol.7 No.2, 11-11, 2012

分子生物学的および疫学的研究の進歩により, これまで不明とされてきた癌の原因が明らかになりつつある. 癌の原因は大きく生活習慣由来と感染症由来に大別できる. 生活習慣病由来の癌は喫煙, アルコール過飲, 肥満などから生じ, 予防は容易にみえるが実際はきわめて困難である. これに対して感染症由来の癌はワクチンや抗生剤投与により予防が十分に可能である. わが国は欧米からみると感染症由来の癌の多い国で全癌中25%を占め, その大半が肝癌と胃癌である. 感染症由来の癌の予防は当然のことながら, 一次予防が優先されなければならない. 肝癌の予防はウイルス肝炎の対策であることが確認され, 2002年より国の補助を得て全国的にウイルス検診が行われ, 陽性者には精密検査がなされ, インターフェロン療法が積極的に導入されている. その結果, 肝癌の死亡者は減少に転じるようになった. 胃癌の場合, バリウムによる検診が古くから行われてきたため, H.pylori感染がその原因の95%以上を占めることが明らかになっても, いまだに検診のあり方は全く変わっていない. 肝癌と胃癌はウイルス, 細菌と原因は異なるが, 両者とも感染症由来であることは紛れもない事実である. それにも関わらず胃癌はバリウムによる二次検診のみ行われ, H.pylori対策は全く顧みられていないという科学的には信じられないことがまかり通っているのが今の日本である. その結果, 40年以上にわたって年間の胃癌による死亡者が約5万人と全く変わらないで継続しているのである. 今回のJAPANGAST Study Groupでは, 感染症由来の癌の予防の先駆者である肝癌研究者からなぜ肝癌対策はうまくいっているのに胃癌対策は全くはかどっていないのかを考えることにした. 牛島先生のエピジェネティックな視点からの基調講演と肝癌研究者を加えたワークショップによって大変充実したものになったと感じている.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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