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CLINICAL CONFERENCE 症例から学ぶ上部消化器疾患

第13回 H. pylori 除菌後に発生した重症型逆流性食道炎の1例

春間賢鎌田智有塩谷昭子眞部紀明楠裕明井上和彦

THE GI FOREFRONT Vol.7 No.1, 9-11, 2011

 Labenzらは,H. pylori陽性十二指腸潰瘍患者の除菌療法後に,高率に逆流性食道炎が発生することをGastroenterology 112: 1442-1447, 1997に報告した。その後,H. pylori除菌後に逆流性食道炎が発生するか否かについては相反する報告がなされ,最近のYghoobiらのメタ解析の結果では否定的な見解が示されている(Am J Gastroenterol 105: 1007-1013, 2010)。一方,わが国では除菌後に逆流性食道炎の発生率が高くなるとする報告が多く(Helicobacter Research 1: 489-492, 1997,J Gastroenterol Hepatol 24: 107-113, 2009),その原因として,除菌による萎縮性胃炎の改善,すなわち,胃酸が無酸あるいは低酸から正酸に近づくことが考えられる。過去に我々が行った低酸あるいは無酸症を対象とした除菌前後の胃内pH測定の結果,除菌後に見事に胃内pHは低下し,萎縮性胃炎における胃酸分泌の改善を示している(Aliment Pharmacol Ther 13: 155-162, 1999)。
 今回,胃過形成性ポリープと胃腺腫をもつ高度の萎縮性胃炎症例にH. pylori除菌療法を行い,1年後に重症の逆流性食道炎を発生した症例を経験したので提示する。

症例
●80歳代,女性
●主 訴:胸痛
●現病歴:10年前に,胃の多発過形成性ポリープで内視鏡的ポリペクトミーを施行され,その後,定期的に上部消化管内視鏡検査を受けていた。数年前から高血圧のため降圧薬の投与を受けている。200X年10月の定期内視鏡検査で,前庭部前壁に胃腺腫を認め(図1),12月に内視鏡的切除を施行。

胃内に数個の過形成性ポリープがあるため,翌年2月にH. pylori除菌を施行。除菌は成功したが,4月頃から心窩部痛が出現し,内視鏡検査を行ったが異常を認めなかった(図2)。

H2受容体拮抗薬あるいはPPIの投与で症状は改善していた。10月末より時々胸痛を訴えるようになり,虚血性心疾患が疑われ諸検査を施行したが異常なし。12月に胸痛の精査も合わせ,1年後の内視鏡検査を施行し,グレードCの逆流性食道炎を認めた(図3)。

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