特集 腎臓と老化
免疫と腎老化:腎三次リンパ組織を中心に
アンチ・エイジング医学 Vol.17 No.4, 18-21, 2021
少子化と高度医療の発達により,先進国を中心に高齢化が急速に進んでいる。この傾向は本邦においても顕著であり,高齢者は臨床現場における診療の主体となっている。腎機能は加齢に伴い低下することが報告されており,腎機能の主要評価項目として,日常臨床で用いられている糸球体濾過量(eGFR)の推算式にも年齢が変数として含まれる。こうした機能低下をきたす背景として,加齢に伴い腎臓に生じる形態的・機能的変化は100年近く前から研究がなされており,さまざまな知見が蓄積している。
一方で,疫学研究より加齢に伴い慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)および急性腎障害(acute kidney injury;AKI)の有病率が高くなること,また高齢者のAKIは予後不良であり末期腎不全へと進行する症例が多いことも報告されている。こうした背景から高齢者の腎不全の病態を明らかにし,適切な対策を講じることが急務となっている。最近われわれは,複数のAKIモデルを用いた検討で,若齢個体では組織修復が起こる時期に高齢個体では三次リンパ組織(tertiary lymphoid tissue;TLT)が誘導されることを見出した。TLTは慢性炎症臓器で誘導される異所性のリンパ組織であり,リンパ球の増殖と活性化を促進する微小環境として,近年悪性腫瘍や自己免疫疾患など,幅広い病態で注目を集めている。本稿では高齢者AKIの特徴,および加齢に伴い腎臓で誘導されるTLTについて概説する。
「KEY WORDS」急性腎障害(AKI),三次リンパ組織(TLT),高齢者
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