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エイジングサイエンス

癌関連線維芽細胞においてPKCζによって制御されるSOX2は大腸癌の悪性度を規定する/BCL6はKRAS変異を有する非小細胞肺癌のBET阻害剤に対する抵抗性を高める

吉田剛

アンチ・エイジング医学 Vol.17 No.2, 58-62, 2021

癌関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblasts;CAFs)が腫瘍の悪性度を規定することはさまざまな癌種において広く知られているが,どのような転写形式を介してCAFsが腫瘍促進性の形質を獲得するかに関しては謎に包まれてきた。本研究によって,転写因子SOX2がCAFsの形質を規定する中心的役割を果たし,なおかつSOX2がプロテインキナーゼζ(PKCζ)によって抑制されることが明らかになった。PKCζが欠損していると,大腸間質に存在する線維芽細胞の転写様式がリプログラミングすることで,SOX2依存性のCAFsが誘導されることが判明した。SOX2はWntシグナルを正に制御するSFRP1/2のプロモーター領域に直接的に結合してSFRP1/2の転写を促進するが,逆にCAFsにおいてSOX2,あるいはSFRP1/2を不活性化すると大腸癌の発生および腫瘍細胞の遊走・浸潤能が阻害される。重要なことに,大腸癌患者の臨床的予後は腫瘍間質におけるPKCζ発現レベルと逆相関することが明らかとなっている。また,SOX2の発現度はTリンパ球・好中球の大腸癌組織への浸潤とも相関しており,予後不良因子である。以上の所見から,PKCζ-SOX2軸はCAFsの悪性度を規定する中心的役割を果たしていると考えられる。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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