<< 一覧に戻る

特集 脂肪肝へのアプローチ:メタボリックシンドロームとアンチエイジングの要

NAFLD/NASHの運動療法:肝臓リハビリテーションの基礎と臨床

中野暖橋田竜騎川口巧山村咲良堤翼松瀬博夫鳥村拓司

アンチ・エイジング医学 Vol.17 No.2, 32-36, 2021

運動療法は,エネルギー消費量の増加,心肺機能の向上,筋肥大,筋力増強,関節痛や抑うつの改善作用など多様な効果を有することからさまざまな慢性疾患の基本治療である1)。運動療法はnon-alcoholic fatty liver disease(NAFLD)においても基本治療であり,運動療法を含めた生活習慣の是正は,NAFLD患者の血清トランスアミナーゼ値だけでなく,肝組織像(脂肪化,小葉内炎症,風船様肝細胞腫大)を改善することがランダム化比較試験により明らかとなっている2)。また,食事に変化を加えず,運動療法単独治療によるNAFLDへの影響を検討した前向き研究においても,12週間の運動療法にて58.3%の症例に肝線維化の改善が認められることも報告されている3)。さらに,身体活動量の増加は肝発癌の抑制にかかわる独立因子であることや(HR 0.55,95%CI 0.38-0.80;p<.001)4),NAFLD患者の全死亡率を低下させることも報告されている(HR 0.46,95%CI 0.28-0.75;p for trend<.001)5)。このように,NAFLD患者に対する運動療法の効果については多くのエビデンスが集積しており,『NASH/NAFLD診療ガイドライン2020』において,運動療法は,単独でもNAFLD患者の肝機能や肝脂肪化を改善するため行うことが推奨されている(推奨の強さ:強(合意率 100%),エビデンスレベルB)6)
本稿では,NAFLDの改善に効果的な運動療法について論述する。また,NAFLDにかかわるマイオカインとヘパトカインや,hybrid training system(HTS)によるNAFLD改善効果についても概説する。
「KEY WORDS」運動療法,NAFLD,ハイブリッドトレーニングシステム,マイオカイン,ヘパトカイン

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る