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特別企画 特集 緊急“新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策”

睡眠と免疫機構

西野精治長田康孝

アンチ・エイジング医学 Vol.16 No.3, 38-43, 2020

2020年初頭より,新型コロナウイルス感染症,「COVID-19」の猛威により,全世界で多くの死者を出す事態となった。日本でも予定されていた東京五輪が延期となり,緊急事態宣言が出されるなど歴史的にみても非常に大きな出来事となっている。過去にはSARS,MERSといったコロナウイルスの猛威があり,季節性インフルエンザも毎年のように問題になっている状況で,今回,睡眠と感染症,免疫について「COVID-19」の現状を鑑み議論を加えた。
COVID-19では,抗体検査により既存感染者が,PCR検査での陽性者の報告値の10〜400倍程度もいるのではと指摘され始めている。この抗体検査の結果をそのままCOVID-19での致死率に当てはめると,季節性インフルエンザの致死率の,0.1〜0.2%以下にもさがる。今後,ワクチン,迅速診断,治療薬が開発されるとインフルエンザ並には対処できる可能性は高いものの,それまでに多くの犠牲者が出ることは間違いなく,最長2〜3年の覚悟は必要かもしれない。特に悪性の経過をとるケースには注意が必要で,その発症機序は,まだ不明なことが多いが免疫防御の破壊が関与するともいわれている。
本原稿の執筆時点で,日本でのCOVID-19感染者は約15,000人,死者は約540人であるが,米国では季節性インフルエンザの感染者が数千万人/年,死者2〜6万人/年にも及ぶと述べると驚かれる読者も多いかもしれない。しかも米国ではワクチン接種が推奨され,ドラッグストアなどでも無料で気軽に接種を受けることが可能で,全国民の4割近くがワクチン投与を受けているにも関わらずの状況である。
そういった背景もあり,インフルエンザの対策が,近年,特に米国で議論されてきたが,適切な睡眠がインフルエンザや風邪の予防,回復に役立つというエビデンスが集積されてきたので,今回はその結果をまとめてみたい。
また炎症性のケミカルメディエーターの多く(インターロイキン(IL),腫瘍壊死因子(TNF)α,プロスタグランジンなど)が睡眠を調節あるいは睡眠に影響を与えるという免疫機構と睡眠調節のクロストークについても多くの知見があり1),その一部も紹介する。
「KEY WORDS」睡眠の質,免疫,感染症,睡眠不足,ウイルス感染率

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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