誌上ディベート
フレイルに高タンパク食は必要か?
アンチ・エイジング医学 Vol.16 No.2, 63-76, 2020
【不要】
長野県佐久市のコホート研究において「毎日肉を食べている人において,eGFR低下率が高い」という結果は大変興味深い。赤身肉や加工肉を多く食べることが腎機能低下のリスクとなり,鶏肉や魚はリスクではなかったという報告もある1)2)。今後は,タンパクの種類や質に着目することも重要ではないかと考える。さらに,eGFRに関しては栄養状態評価時にはクレアチンをベースにした腎機能評価にはさまざまな問題点も指摘されている。また,「BUN20以上のものは特に高タンパク質食により腎不全となりやすい」ことに関しては,さらなる検討を要すると考える。中等度の腎機能低下のある集団において,low protein diet(0.58g/kg per day)群とusual protein diet(1.3g/kg per day)群を比較したところ,2群において腎機能低下に差はなかったとの報告もある3)。その他の報告も結果はさまざまであり,食事の種類,高血圧や肥満など他の合併症,腸内細菌叢,炎症などさまざまな関与があると考えられる。今後,個々の病態に応じたタンパクの制限およびタンパクの種類による制限などに繋がる新規的成果を期待する。
【必要】
日本における65歳以上の高齢女性を対象とし,タンパク質とアミノ酸の摂取量と虚弱との関連を調べた研究では,総タンパク質摂取量は,虚弱と有意に逆相関している4)。また,4編の論文についてのシステマティックレビューにおいても,1.0g/kg以上のタンパク質摂取はサルコペニアの発症予防に有効である可能性が指摘されており,「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」においても推奨されている5)。筆者の意見にもあるように,十分なタンパク質摂取量は高齢者の骨格筋量の維持に重要な役割を果たすことが示唆されていると考える。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。