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特集 抗加齢医学とプロバイオティクス

酪酸産生菌

萩原真生山岸由佳三鴨廣繁

アンチ・エイジング医学 Vol.16 No.2, 39-43, 2020

腸には,ヒトの細胞数の約37兆個よりはるかに多い100兆個もの細菌が棲んでいるといわれる。現在,腸内細菌叢についての研究が進展し,腸内細菌叢はその人の摂取する食事,体調や疾患に関係することが明らかになってきた。バランスの悪い食事や過度のストレス,抗菌薬の過剰な摂取などの要因で腸内細菌叢は乱れる。また,腸内細菌叢の構成菌種の変容や異常増殖,減少はdysbiosisといい,ヒトの腸管だけでなく,全身の免疫系,代謝機構に異常を引き起こし,脂肪肝炎やメタボリックシンドローム,関節リウマチ,自閉症,多発性硬化症といった疾患に寄与している。さらに,現在では「腸内細菌が作り出す物質」にも焦点が当てられ,その機能や可能性についても注目されるようになってきた。腸内細菌は,ヒトの消化器では消化できない食物繊維を原料として,生命維持に不可欠なビタミン類,酪酸などの短鎖脂肪酸などを作り出す。今後,健康の増進や病気の予防・治療を考えるうえでも,腸内細菌による発酵がますます重要なポイントとなり,それに関与する「酪酸菌・酪酸」などの存在に注目が集まっている。
「KEY WORDS」酪酸菌,酪酸,短鎖脂肪酸,腸内細菌叢

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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