特集 アスリートに学ぶアンチエイジング
運動しすぎは,アンチ・アンチエイジングなのか
アンチ・エイジング医学 Vol.16 No.1, 46-50, 2020
国民の健康維持・増進を目的とした身体活動量の指標である「健康づくりのための身体活動基準2013」によると,18〜64歳では,生活習慣病などを発症するリスクを低減させるための望ましい身体活動量は「3メッツ以上の身体活動を1週間に23メッツ・時」とされており,具体的には「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行うこと」とされている。この基準に対し,「1回30分以上の運動を週2回以上,1年以上継続している者」の割合は男性が35.9%,女性が28.6%にとどまっており,この10年間でほとんど増減していない(平成29年 国民健康・栄養調査より)。その一方で,近年は“第二次マラソンブーム”といわれており,ジョギング,ランニングを実施している人の推計人数は606万人(2006年)から964万人(2018年)へと,約1.5倍に増加している(笹川スポーツ財団 スポーツライフ・データより)。日頃からランニングをしている人を対象とした調査によると,1ヵ月の走行距離は平均124kmであり(図1),これは1週間あたり約32メッツ・時の運動に相当すると考えられる(時速8.0km:8.3メッツとして算出)。これらのことから,日本国民全体のなかでは運動習慣のない人が多数派であるが,反対に1週間に23メッツ・時を軽々超えている人も一定数存在するといえる。定期的な持久性運動が加齢によるミトコンドリアの機能低下を抑制する1)との報告があるように,適度な運動が健康増進に役立つことは多くの研究によって証明されている事実であるが,“やりすぎ”によってむしろ健康を損なうとの指摘が存在することも事実である。そこで本稿では,適度の範囲を超える運動が身体におよぼす影響を,酸化ストレスの観点から検討することとした。
「KEY WORDS」過度な運動,抗酸化能力,ランニング
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