超高齢社会に突入したわが国では,2018年における高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)が28.1%と世界でもっとも高くなっており,今後も増加の一途をたどると見込まれている。同じく2018年のわが国の平均寿命は,男女ともに前年を上回った。平均寿命と健康寿命の格差が大きくなると,生活の質は低下し社会保障費は増大すると考えられる。したがって,健康寿命を延伸し平均寿命との差を縮小しなければならない。骨や骨格筋といった運動器の機能は,健康寿命に大きな影響を与える。日本整形外科学会が提唱するロコモティブシンドロームは,運動器の機能が低下することで要介護や寝たきりになる,またはそのリスクが高い状態のことを指し,健康寿命を短縮する要因の一つであるとされる。運動器のなかでも,筋肉は加齢やさまざまな疾病によりその機能や量が低下するが,有効な予防法や治療法は運動療法以外に確立されていない。栄養状態は全身の骨格筋量に大きな影響を与えるため,高齢者の多くに認められる低栄養は筋萎縮の一因となっている。近年,筋萎縮の予防・改善法として食事療法が注目されている。筋萎縮の予防・改善といった機能性を有する食品成分も複数報告されており,有効な食事療法の開発が期待されている。本稿では,食事を介した骨格筋量の調節機構について解説するとともに,最近,われわれが明らかにした絶食のタイミングの違いが骨格筋に与える影響についても紹介する。
「KEY WORDS」インスリン様成長因子1(IGF-1),インスリン,筋萎縮,骨格筋,体内時計