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特集 時間栄養学とアンチエイジング

メタボ異常と時間栄養

大池秀明

アンチ・エイジング医学 Vol.15 No.6, 27-32, 2019

近年,時間栄養学が大きく注目されている。メタボ対策の王道といえば,カロリーや食事(糖質・脂質)を制限することであったが,“時間”を制限すれば良いというのが目新しいのかもしれない。しかしこれは,単に目新しいだけではなく,これまでの栄養学があまり重視してこなかった本質的なポイントに踏み込んでいる。専門家も含めて,多くの人は摂取カロリーと消費カロリーの差分に注目し,摂取カロリーが上回れば太り,下回れば痩せると考えている。熱力学的に考えればその通りであるが,生物の仕組みとして,その偏った状態を維持するのがいかに困難であるかは,ダイエットに失敗したことがある人であればすぐにわかると思う。生物の身体はホメオスタシスによって自然に特定の状態が維持されるようになっている。食事量を減らせば,身体はエネルギー消費量を減らしてエネルギーが枯渇しないように反応するし,運動量を増やせば,食欲を亢進させてエネルギー摂取を増やそうとする。昨今の時間栄養学が明らかにしつつあるのは,このエネルギー収支が安定するバランスを変化させるということである。備蓄するエネルギーを抑えつつ,安定した高いパフォーマンスを発揮する。生物にとってはこれが競争力の高い状態である。このために,1日単位の体内時計(概日リズム)が進化し,活動期のエネルギー回転を高め,休息期に低下させるという時間的分業が生み出された。地上で生活するほぼすべての動植物には概日時計が備わっており,進化的に相当に有利であったことが理解できる。ここでは,時間栄養学の視点から,エネルギー代謝疾患を予防する最新の知見について紹介したい。
「KEY WORDS」体内時計,食事時間,社会的時差,シフトワーク,糖尿病

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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