時計遺伝子の発見などにより,体内時計の分子基盤やシステムとしての働きが精力的に研究されてきた。体内時計のライフステージ別の調査研究などが行われ,学童期でのブルーライト問題,すなわちスクリーンタイムの延長による体内時計の夜型化が問題となっている。また,高齢者の体内時計の特徴も明らかになりつつある。適切な生活リズムによって体内時計を正常に保つことは,健康寿命の延伸につながるものと考えられる一方で,体内時計の基本的性質である周期,振幅,位相のいずれの指標も老化の影響を受ける。
近年の薬物療法に関する研究では,投薬時刻の違いが薬効や副作用に影響することが知られており,時間治療が実践されるようになってきた。たとえば,スタチン系の脂質異常症治療薬は,コレステロール合成酵素が活発である夕方に投薬すると効果が強く出る,といったようなものである。