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総説

アンチエイジングと「排尿」

松本成史

アンチ・エイジング医学 Vol.15 No.5, 58-63, 2019

総説タイトルとして『アンチエイジングと「排尿」』と,あえて「排尿」をカッコ付きにした。これは,一般的に排尿と表現されるのは尿排出時の事象を指すことが多いのに対し,「排尿」は本来,蓄尿期から尿排出(排尿)期までの一連のサイクルにおける機能全般を指すからである。当然,排尿障害とはこの一連のサイクルのどこかに何らかの不具合や不都合(異常)が認められ,「排尿」という行為(機能)がうまくできない状態を指す。排尿障害は通称で,医学専門用語としては蓄尿障害と尿排出(排尿)障害を含めた総称として,下部尿路機能障害(lower urinary tract dysfunction:LUTD)と表現する。また,「排尿」に関する種々の症状は下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)と表現し,排尿症状,排尿後症状,蓄尿症状などが含まれる1)2)(本稿では,「排尿」障害はLUTDと表記する)。エイジングにより蓄尿障害も尿排出障害も出現し,複合的に関与するため多彩なLUTSを呈し,LUTDは一様ではない。LUTDの背景や原因,機序はさまざまであるが,LUTDは著しくquality of life(QOL)に影響し,わが国では近年の高齢化に伴い,その有病者数は増加しており,医療,看護・介護における比重も増加の一途をたどっている。
LUTDの原因となる膀胱や尿道,その周辺臓器などの下部尿路の器質的疾患や中枢・末梢神経系システムの異常を呈する疾患などを除くと,その機序に関しては血流障害が大いに関係し,影響していることが近年盛んに議論されている。アンチエイジング医学のキーワードである局所的・全身的血流障害や,これらの複合的な問題とLUTDとの関連や,その治療アプローチについて解説し,「排尿」のアンチエイジングについて理解を深めていただきたい。
「KEY WORDS」「排尿」,下部尿路症状(LUTS),下部尿路機能障害(LUTD),膀胱血流,虚血・再灌流障害,メタボリックシンドローム

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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