特集 メタボローム解析とアンチエイジング
メタボローム解析からの老化研究
アンチ・エイジング医学 Vol.15 No.5, 42-47, 2019
現在(2014年),日本は世界で唯一高齢化率25%を超えた国である(世界平均は8%)。しかしながら,グローバル高齢化の波は着々と押し寄せており,2050年頃には欧州各国,中国,韓国,タイ,シンガポール,イラン,チリ,カナダなどが高齢化率25%を超え,世界平均も18%となる(WHO予測)。その頃,日本は40.5%を超えると予想され(平成23年版 高齢社会白書),「老化先進国」と呼ばれる所以である。
グローバル高齢化の原因の一つは,高齢者全般の健康増進と同時に,時代の変遷による「老化」の中身の変化である。たとえば,終戦直後は感染症克服が寿命延長に直結し,1960年代は脳出血による寝たきりが大きな課題であった。そして今,老化先進国日本では,健康長寿者増加の一方,寝たきりやフレイルの増加という,「高齢者の多極化,多様化」の課題に直面している。
「老化の多様性」は,多彩な高齢者を生み,その臨床症状にも観察される。たとえば,動脈硬化の指標である頸動脈の内膜肥厚や脈波速度において,若年では均一に低値を示すが,高齢者は低値から高値まで「バラつき」が大きい。確かに高齢者の平均値は若年者より悪化はしているが,若年者よりも値のよい高齢者も一部存在する。以上の事実は,「老化」という生命現象が多面的かつ複雑であり,「老化の多様性」がその本質であることの証左でもある1)。
ヒト老化の指標として,「暦年齢」が従来から現在まで用いられている。「暦年齢」に従えば,高齢者の分類は,前期高齢者(65~74歳),後期高齢者(75歳以上),超高齢者(90歳以上),百寿者(100歳以上)の4群となり,1956年の国連報告書にその端緒がある。しかし,60年以上前の時代背景と現状では大きく異なり,前述のグローバル高齢化や高齢者の多様化により,高齢者の再定義そのものが必要となりつつある(2017年日本老年医学会提言)。
「KEY WORDS」老化,酸化ストレス,赤血球,飢餓応答,抗酸化
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。